今はロサンゼルスにいる。このブログは成田空港で書いた。ところで、「B勘屋」とは、ご存知だろうか。法人税対策のため、架空の経費をでっち上げ、それを損金で落とす。税務署の調査に備え、これもニセの領収書を用意する。ニセの領収書といえども、領収書発行元の会社名、所在地、印鑑等の記載が必要である。このニセ領収書を作るのが、業界で「B勘屋」といわれる。
このほど、この「B勘屋」が5億円の所得隠しに加担したとして捕まった。容疑は、法人税法違反のほう助罪である。「B勘屋」となぜ言うかというと、ブラックマネーの頭文字の「B」と裏勘定の「勘」を抱き合わせた日本語。しかし、税務職員が税務調査の際に調査先から提出される帳簿(本当の)を「A勘定」と呼び、二重帳簿など裏帳簿を「B勘定」と言ってきたことにも関係がある。
過去に何十億円にのぼる脱税に、この「B勘屋」が関与している場合が多く、このほど捕まったS被告は、利益が出ている会社に対し架空経費の計上を持ちかけ、S被告自身が役員の会社がウソの領収書を発行し、そのウソの領収書を受け取って経費処理した会社は、ウソの領収書分の金額をいったんS被告の会社に振り込ませ、その後、S被告は10%の手数料を受け取った後、90%の金額をバックしていたという。
私見ではあるが、このような脱税行為は、2、3回ならバレないかもしれないが、継続してやっていると、いつかはバレる。
逮捕されたS被告は名刺を100種類以上、会社も100社所有しているという。このS被告は数か月ごとに、発行する領収書の社名をその都度変えていたという。会社も東京都新宿区、静岡県伊東市、佐賀県唐津市など転々と変更し、不正が発覚しないように所轄税務署を変更していた。
私に言わせれば、このS被告は税務に素人である。本店所在地を次々に変えるだけで税務署から目をつけられる。初めはうまくいったのだけれど、所詮、税金のアマである。これほどのことをやったのだから実刑は免れない。しかも、入った手数料は脱税で全額押さえられる。馬鹿な話である。
☆ 推薦図書 ☆
前野隆司著 『幸せな職場の経済学』 小学館 1,400円+税
その昔は、幸せといえば、経済の豊かさ、仕事での成功、社会的な地位の高さ、等々であった。しかし、最近は、「カネ、モノ、地位」に本格的な幸せは見出せないという人が多くなった。アメリカの経済学者フランクは、他者との比較優位によって価値が生まれ、満足を得られる財を「地位財」、他者との比較でなく、それ自体価値がある財を「非地位財」と分類した。地位財は役職や所得、財産、社会的地位である。非地位財は愛情や自由、健康である。イギリスの心理学者ネトルは、地位財における幸せは長続きしないが、非地位財における幸せは長続きするとした。経済学者のカーネマンは、地位財を欲求する人を「フォーカシング・イリュージョン」と呼ぶ。つまり、イリュージョン(幻想)にフォーカス(焦点)をあてるという意味だ。間違った方向に焦点をあて、それを目指すということだ。彼は、感情的幸福は年収7万5000ドル(800万円)までは収入に比例して増大するが、それを超えると、所得は増大しても幸福度は変化しないとしている。それにもかかわらず、人はもっと収入を得たい、もっと良い家に住みたい、もっと高い地位につきたい、と望む。それこそ、フォーカス・イリュージョンであると。