もう何ヶ月も香港ではデモ隊と警官の衝突が続き、海外メディアの報道も日常になった。今年4月に立法会へ提出された、香港での犯罪者を中国に引き渡せる「逃亡犯条例改正案」がきっかけである。
香港はもともと、1842年に南京条約で香港島、1860年に九竜半島がイギリスの領土になり、1899年に新界を含む地域を99年間イギリスが租借することになった。そのため、香港は植民地化されたが、イギリスの民主主義になれ親しんだので、一般市民の選挙権を制限する一党独裁の中国とは相いれないのは当然である。一国二制度とは看板だけである。
この長期化するデモ、終息が見えない香港で日本の富裕層と香港の富裕層が慌て始めたのである。香港は税務的には法人税、所得税の税率は低い。相続税、贈与税もない。加えてキャピタルゲイン課税もなく、利子に対しての課税もない。ということで、日本から距離的に近いので、今まで多くの日本人富裕層が香港で資産運用や隠し財産活用に相勤めてきた。
今の騒動を眺めていると、中国がますます影響力を行使してデモ隊に発砲する光景から、今後、香港が外国富裕層に対して、今までのようなサービスができるのか、さらには外国富裕層の資産を守ってくれるのか、あるいは凍結されるのか、今香港では金融界にも一部、風評被害が出ているという。そのため日本の富裕層は、次なるタックスヘイブン国に資産を移す計画を持つ者が少なくない。
次の問題は香港の富裕層である。昔、武富士の長男は節税のため香港に移住した。日本の富裕層の海外脱出先であったが、最近はその香港から富裕層が海外脱出するようになった。
ブルームバーグによると、過去には脱出先として一番多かったのはアメリカであった。ところが最近の脱出先としては、カナダ、オーストラリアの人気が最も高く、次いで、台湾、シンガポールだそうだ。なぜアメリカが脱落したのかといえば、トランプ大統領のもとアメリカ入国ビザの検査が非常に厳しくなり、グリーンカードなどの取得は夢のまた夢になったので、アメリカに向かわなくなったのが原因としている。
カナダには相続税・贈与税はなく、その代り相続財産を時価で売ったとして所得税の対象になるが、実際にはないに等しい。オーストラリアやニュージーランド、シンガポールも同様にない。こう考えると、香港人を含め世界のあらゆる国の人たちは、間違っても日本を目指す人はいないだろう。
☆ 推薦図書 ☆
渡辺順子著 『高いワイン』 ダイヤモンド社 1700円+税
この著者を取り上げるのは2冊目である。前回は「教養としてのワイン」であるが、これがベストセラーとなった。
2018年、ニューヨークで行われたワインオークションで、誰もが驚いた歴史的瞬間があった。1945年産のブルゴーニュのロマネコンティ1本が、なんと55万8000ドル(6300万円)で落札されたのである。グラス1杯が1000万円という事である。1945年産ロマネコンティがあるということは私も知らなかったが、あったのである。このロマネコンティは例外だとしても、ボトル1本が100万円から300万円というレベルのワインは世界中に多数ある。これらの高級ワインは、その地域を代表する一流ワインとして世界中に認知されている。この一流ワインの知識は、ワイン自体を深く知り、深く楽しむためにも必要不可欠である。ビジネスでも「一流」を知ることには欠かせない。
この著はワインを知るうえで「一流ワイン」の知識を紹介している。フランス、イタリア、カリフォルニア、それに南米、オーストラリアなど、地域ごとに必ず押さえておきたいワインを紹介している。やはりワインは教養である。