26日、日曜日、ヘリコプター事故で元NBA選手Kobe Bryant死亡のニュースが全世界に流れた。私も日本にいなかったので、海外のテレビで見た。今やアメリカではトランプの弾劾裁判やコロナウイルスの問題よりも、はるかに大きな話題をさらっている。このヘリコプター墜落により、娘さんを含め9名全員が事故死と、どこの番組も報道をしており、あまりの突然の悲劇に全米がショックを受けた。彼はまだ41歳の若さだ。彼は死してレジェンドになったわけだが、短い彼の人生は波乱万丈だっただけに多くのメディアが大きく取り上げている。
Kobe Bryantは1996年から2016年までの20年間、私が好きなロサンゼルスレイカーズで活躍、2000年から2002年にPhil Jackson監督の下、Shaquille O’Nealとコンビを組み3年連続NBA王者に輝き、2009年及び2010年はPau Gasolとコンビで2年連続NBA Championとなっている。その他、NBA All Starには18回、NBA All Star MVPには4回、NBA Final MVP 2回選出、2008年北京、2012年ロンドンオリンピックでTeam USAを金メダルに導き、誰もなしえなかった輝かしい成績を残した。
一方、2003年にKobeから性的暴行を受けたとして、コロラド州で当時19歳の女性に訴訟を起こされた。 Kobeは同意の上だったということで無罪を主張、ところが、裁判所のミスでこの女性の名前が洩れ、メディアで大々的に公表された。この女性や家族の元に脅迫状が次々届き、メディアも女性の性遍歴を暴露するなどひどいバッシングを行った。このために女性は精神面で不安定になり証言できなくなった。結局検察が訴訟を取り下げ、Kobeは刑事事件としては無罪放免となったが、金銭的な和解をすると同時に浮気を告白し、懺悔した。Kobeの奥さんが私立探偵を雇い調べさせたところ、105人もの愛人がいたと当時報じられている。
また、このレイプ事件後に400万ドル(5億円)ものパープルダイヤモンドを奥さんに贈ったが、2011年に奥さんが離婚を申し立てた。和解したものの、この間、Kobeからいくつかのスポンサーが降り、金銭的に大打撃を受けている。
Kobeは20年間の選手生活で給与及びスポンサー契約で6億8000万ドル(800億円)を稼いだと言われている。この中には今後稼ぐだろうと言われている肖像権は含まれていない。Kobeはそれなりの相続税対策を行っているとは思うが、まだ子供も小さく、資産をトラスト等へ移転はしていないかもしれない。アメリカでは、奥さんに非課税で全ての相続資産が移転するので心配はないが(日本のように子に遺留分などない)、トラストや受取人が指定されていない資産についてはプロベートの対象になって大変なことになる。この場合、遺産が公表され、手続も煩雑で時間もかかり、何年も費やさなければならない。
今後だが、これはKobeがチャーターしたヘリコプターなので、今回死亡した他の家族から訴訟を起こされる可能性は十分ある。一方で彼の相続財産で言えば、肖像権がいくらになるのかが大問題になる可能性がある。IRSはマイケルジャクソンの場合4億ドル(500億円)だと試算した。この肖像権だが、エルビスプレスリーやエリザベステイラーのように死後、生前よりもお金を稼ぎ出している。ロビンウィリアムスの場合、この肖像権は死後、寄付団体に寄付をするよう遺言されていた(家族構成が複雑だったため、相続争いを避ける手段だったのかもしれないといわれている。)。今後のKobeの相続手続きの顛末で一冊の本ができるのではないだろうか。
☆ 推薦図書 ☆
野口悠紀雄著 『「超」現役論』 NHK出版 850円+税
元大蔵官僚の著者も今年で80歳である。この旺盛な知識欲は感服するほかない。このブログでも何冊が取り上げたが、この氏には、やはり「超」が似合う。
年金崩壊後を生き抜くと題してだが、日本は高齢化が進む一方、社会保障制度の改革がない。人生100年時代が到来しつつあるなか、100年を生き抜くのは決して容易ではない。人生100年時代は決してバラ色ではないということだ。政府は国民の大幅な負担増なしに社会保障制度を維持できるというが、現実的ではない。年金の支給時期が70歳に引き上げられるのは見えている。その場合に、老後に必要な資金は3000万円を超える。
このため高齢者の就労が重要なファクターとなり、労働人口の増加が課題になる。
それにはフリーランサーの活用が不可欠である。現にアメリカでは5670万人、これは全就業者の35%にあたるフリーランサーが仕事をしている。対前年比7%の増加であり、日本政府も一刻も早くこれに取り組まなければならないと。