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アメリカの新税、GILTI 合算課税、日本企業にも影響か

America Firstを唄うトランプ大統領に、諸外国が翻弄されている。「米国外軽課税無形資産所得(Global Intangible Low-Taxed Income)(GILTI)合算課税」については日本でほとんど報道されていない。この制度は専門的で今回のブログの理解は難解かもしれない。

アメリカ人やアメリカ企業保有の外国法人がアメリカの株主に配当を行わず、アメリカ国外に留保利益を貯めこむ傾向があることから、今回の措置は、国外子会社が利益を上げた時点で資金還流を待たずにアメリカからの課税が行われる制度とした。

アメリカ財務省は2019年6月14日、アメリカ税制改正「The Tax Cut and jobs Act」で新導入されたGILTI合算課税を最終化した。被支配外国法人(Controlled Foreign Company)(CFC)の利益に対してアメリカが課税するという、誠に身勝手な話である。CFCとはアメリカ株主により議決権総数の50%超を直接・間接(夫婦、親子、孫は合計で判断)に保有するその外国法人をいう。具体的には10%以上株式を保有するアメリカ市民、グリーンカード保有者である株主に合算して50%超を所有されている外国法人がCFCになる。

新GILTI合算課税は、CFCがアメリカ株主に配当するか否かにかかわらず、毎期アメリカ株主側で合算課税するという、今までになかったクロスボーダー課税である。

先ず、複数のCFCが存在する場合、各CFCがCFCレベルで「Tested Income(Loss)」アメリカの税法に沿った税引後所得を算定、全CFCのTested IncomeとLossを通算し「Net Tested Income」を算出する。この算出した金額から「ルーティン所得」を差し引いた額がGILTI合算課税所得となる。

「ルーティン所得」とはCFCが所有する有形償却資産(Qualified Business Asset Investment)(QBAI)の簿価をアメリカ株主側で合算し10%を乗じた金額から特定の支払利息を差し引いた金額である。
GILTI = Net CFC Tested Income - (QBAI×10%)
合算された金額から50%の所得控除が認められるので、実際は連邦所得税率21%の半分10.5%が課税される。

これは大きい、中小企業の場合実質課税率は20%くらいなので、30%になる。しかも単年度課税なので、繰越損失も使えない。日本始め、どの国もこのGILTI合算課税に異を唱えていない。不思議である。

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小原凡司、桒原響子 共著 『 AFTER SHARP POWER 』 東洋経済新報社 1800円
副題は「米中新冷戦の幕開け」。今、外交は従来のような政府間レベルの交渉ではなく、文化交流などで相手国の世論を味方につけ、自国に有利な環境作りを行う手法を「パブリック・ディプロマシー」つまり公共外交というのだそうだ。特に中国は、かなり以前からアメリカに対してパブリックディプロマシーを展開してきた。特に中国国際放送局は1990年からDCなどの主要都市で英語ラジオ放送を行ってきた。やっと最近アメリカは気付いたのか、こうした中国の行為は「シャープパワー」だとして警戒し始めた。シャープパワーとは覇権国家が情報の歪曲、世論操作などの手段を通じて、自国の主義、方針を飲ませようとするものである。
アメリカは中国の中国語教育機関「孔子学院」を相次いで閉鎖している。さらに最先端技術を学ぶ中国人留学生のビザ有効期限を5年から1年に短縮した。
中国の意図は、米軍の軍事力である、トラウマになったのは1999年のNATOによるコソボ空爆だ。この空爆は人権擁護の旗印の元、国連決議を経ないまま行われた。欧米諸国が中国を攻撃する可能性がいつもあると考えているのが中国首脳である。としている。

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