ブログ

アカデミー賞受賞者、アメリカの税金

先週の日曜日にアカデミーの受賞式が行われたが、視聴率は最低だったようだ。昔は、アカデミー賞は6000人のハリウッドで働く労働組合の組合員の投票で決まったが、最近は有識者や外国人も選考委員になった。そのためか、オスカーはスターウォーズのような万人受けする映画やそこに出て来る俳優は殆ど受賞せず、最近は玄人受けするマイナーな映画に注目が集まる傾向にあり、年々その人気は下がっている。

さて、Forbesによると、オスカーにノミネートされる俳優や映画監督、全員合わせて25人には毎年、セレブマーケティング会社Distinctive Asset社により豪華なギフトバッグが渡される。Distinctive Asset社はアカデミーとは何の関係もないが、20年にわたり豪華ギフトを提供している。今年はスカーレットジョハンソンが主演女優賞と助演女優賞のダブルでノミネートされたので、ギフトの数は24個となる。昨年のギフトの時価は約8万ドル(900万円)だったが、今年は何と22万5千ドル(2500万円)まで跳ね上がった。まさに超豪華ギフトである。全額で5400万ド(6億円)になる計算だ。

その中味だが、日本の福袋のようなもので、安いもので1箱4.89ドルのチョコレート、30ドルの水素水、75ドルの入浴玉、変わったもので言えば、脳波センサー付瞑想用ヘッドバンド、病気の感染をテストできる尿検査器具や、どのような女性にもフィットするスマートブラもある。もちろん海外の隠れ家的な場所への旅行もあるが、最も豪華なギフトとして7万8,190ドル(900万円)相当の12日間の豪華クルーズがある。これは220人乗りの豪華ヨットでバトラーやスパは勿論のこと、ヘリコプター2台、小型潜水艦も搭載している。目的地は南極や地中海のようである。

それでは22万5000ドル(2500万円)の受賞金額は税務上どう取り扱われるのか?
実はアカデミーでも2006年まではそれなりのギフトバッグを渡していたようだが、IRSによる税務調査が絶えず、止めたのである。アメリカの税法に従うと、ギフトバッグを渡した人は、それをもらった人及びIRSに対して、ギフト額をForm 1099なるフォームに記載し提出しなければならない。これを受けとった人は収入としてアメリカIRSに申告をする義務がある。ギフトバッグは贈与にならないので、現金ではないもののギフトバッグに入っている物品の市場価値が課税対象となる。

毎年少なくとも1名はこのギフトバッグを受け取らない人がいるようだが(今年は誰も辞退していない。)、その人たちの多くは慈善団体への寄付をするようである。この場合でもギフトバッグの市場価値を収入として申告し、慈善団体の寄附金として同額を控除することが必要になる。自主申告しなければならないのだ。

それでは、全く受取らず寄付もしない場合はどうなるのか?例えば会社からのボーナスを従業員が拒否した場合、IRSによればそれでも授業員は収入として申告をしなければならないとされている。ギフトバッグを提供する組織やベンダーはForm 1099を発行するので、誰が受け取ったかIRSは把握している。つまり、いらないといっても1099が発行される限りIRSがどこまでも付きまとうことになるのである。IRSにとっては申告漏れを把握できる一番簡単な手段となるのであるから、このForm 1099はアカデミー賞受賞者にとって頭痛の種で、初受賞には、お祝いの言葉よりも、先ず、アメリカに対しての納税指導をしなければならないのである。このようなことから、アカデミー賞はIRSのための式であるといえる。

☆ 推薦図書 ☆
坂口孝則著 『日本人の給料はなぜこんなに安いのか』 SB新書 830円
「こんなに働いているのに、なんでオレの給料は安いんだ」「年金なんて払い損じゃないの」など、生活をしているとたくさんの疑問が浮かぶ。本書はそれに応えるべく執筆されたものであるとしている。
日本人の多くは豊かになっていない。統計からみても日本人の給料は先進国の中で比べると極めて低いと言える。日本人はもはや国際的には「安い人たち」になっている。アメリカのIT企業が従業員に支払う給料の平均は年額約3000万円。私も日本人の給料は先進国では極端に低いと思っている一人である。日本企業の年収ランキングでも、上位はTBSの1632万円、三菱商事1540万円、朝日放送1478万円、日本テレビ1461万円と続くが、製造業や小売、IT、中小企業などは及ぶべきことではない。
もともとマルクスは労働力も商品であり、従って原価をもとに価格が決まるとしている。日本人の給料もそうであるが、サラリーマンが生活できる水準が相場で決まり、それが給料の額となる。日本の給料は「製造業」がベースにあり、終身雇用並びに安定した雇用ができるのが第一で「一度入社したら終身ここで働いてください」であるので、雇用の流動性が諸外国に比べて極端に少ない。いまだに「転職しない」「辞めない」「首にならない」を掲げているので、今問題になっている優良企業の留保金の積み上げも、従業員に還元しない、株主にも還元しない。何か起こっても今の蓄えで当分、皆さん安泰ですよと。

関連記事

  1. ギリシャ危機と地下経済と脱税
  2. ロンドン市長をIRSが脱税告発
  3. イギリスの富裕層、労働党政権で国外脱出相次ぐ
  4. エリザベス女王の相続税
  5. 相続税100億円の支払拒否、タイトー創業者の遺族
  6. 富裕層の海外脱出摘発、国税庁のプラン
  7. 密告が好きなアメリカ次期国税庁長官(IRS)
  8. ヤンキースAaron Judge 62号ホームラン記念ボールと税…

アーカイブ

PAGE TOP