毎年、来年度税制改正はその前年の12月に与党から公表される。拙著「こう変わる‼ 令和2年度の税制改正」(実務出版2000円+税)も今年3月に出版、発売された。しかるに、4月2日に追加で令和2年度のコロナ対応といえる改正税制案が自民党、公明党から緊急に特例法案として国会に提出された。
それによると柱は「コロナ騒動で、経営基盤が脆弱な中小企業や個人企業への資金繰り支援」となっている。私などは、資金繰り支援は経産省か金融庁の仕事と思っていたが、そうではない。中身を見ると、コロナの感染拡大を受けて収入が激減した中小企業や個人事業者に、所得税や法人税、消費税、固定資産税など、すべての税の支払いを1年間延期するというようなものである。
具体的には、
①所得税、法人税、社会保険料の支払いを1年間延期
②赤字でも固定資産税は納めなければならないが、収入半減の場合は1年間タダにする。ただし土地、家屋は対象外
➂資本金10億円以内なら、今年赤字の場合、昨年払った法人税を、その分還付
④イベント中止で払い戻しできなかったチケット料金は寄附金として処理
➄住宅ローンは居住していなくても適用可
➅自家用車購入時の燃費課税1%軽減を延長 などである。
何ともショボイではないか。このような減税で、コロナで減収した収入が補えないのは当事者でなくてもわかる。1年間延期された税金も、いずれは払わなければならない。1年間は全ての税金はタダ、延滞は10年後でも構わない、といっても助からない事業者が数えきれないぐらい出るというのに。
☆ 推薦図書 ☆
ダニエル・ネトル著 金森重樹監訳/山岡万里子訳 『幸福の意外な正体』 きずな出版 2,200円+税
この本のサブタイトルは「なぜ私たちは「幸せ」を求めるのか」である。幸せとは何か、著者は、かなりの数の人の声と、膨大な資料から、幸せな人とはどんな人かなど、幸福度について分析している興味深い内容である。まず幸福度は健康であることとしている研究が多い。イギリスのある研究者は、生活を自分で管理できることは幸福度を高める。貧しくても自由を得ているグループは、裕福だが自由がないグループに比べ、高い満足度を示している。ある学者によれば、財は「地位財」と「非地位財」に分離でき、真の幸福は「非地位財」がもたらす。「地位財」とは、他者との比較で満足するもの、お金、邸宅、財産など。「非地位財」は他者が持っているかどうかと関係なく、喜びを感じるもの、健康や自由や達成感など。
今日、物質的な豊かさは向上したが、幸福度のレベルは上がっていない。世界のグローバル化で、あまりにも多くの「比較対象」が目に入る。その広がりとともに、消費財の溢れる現状が私たちの欲望をますます加速させるのも大きな原因であると。