ついに有史以来初となる公務員の新人研修がオンラインで行われることになった。
全国から例年、大学卒業生約1000人余りが宿泊して研修期間中の交流を深めつつ、国税職員としてのスキル、能力、常識はもとより、税務知識を徹底的に叩き込まれる。
その研修場所が埼玉県和光市の税務大学校である。そばには大宿泊施設がある。記憶に新しいが、そこは、かの「ダイヤモンド・プリンセス号」の乗員、乗客が隔離され収容された場所である。地元住民には、その研修場所は感染病棟とのイメージがある。そこに1000人以上集まれば、集団感染が発生し、周辺地域に拡大する恐れがあると、不安視する抗議があり、国税庁がついに、そこで研修するのをあきらめたという次第だ。
講義はクラウド内にアップされた動画をダウンロードして進めることになる。当然のことながら生徒に一方通行で、1000人のうちどれほどが理解できているのか、もともと細かく生徒を区切って専門官が講義するのだが、これでは生徒の理解度は把握できない。当たり前である。このようなことで新人研修が完璧に行われるのであれば、役所も企業も苦労はしない。
さらに大卒以外の、高卒の研修が税務大学校以外の船橋市や枚方市でも行われる。こちらは20歳未満の研修生である。これらの研修生を社会に送り込むわけだが、税法の基礎知識の習得はおろか、国税庁の人事担当官は「不祥事が多少発生するのはやむを得ないかもしれない」と今から言っている有様だ。それだったら一層の事、税務署の新人研修も4月からではなく9月から始めたらどうであろうか。
☆ 推薦図書 ☆
荒木博行著 『世界「倒産」図鑑』 日経BP 1,800円+税
「倒産」は教訓と知恵の宝庫である。なぜ一時代を築いた企業は破綻に至ったのか、日米欧の25事例を徹底分析。良い会社かどうかを判断する際、過去の実績や経営指標などのデータを重視するが、数字だけでは見えないこともある。
倒産に至る過程を、人間ゆえの弱さを軸に見ていくと、新たな発見がある。経営者も一人の人間であり、例えば急成長の後の油断や甘え、変化に対する焦り、恐れなどにより迷い、時には不正に手を染めてしまうこともある。この本は、先人の失敗こそ、時代を超えた貴重な教材だとして具体的に会社名をあげ分析している。面白かったのは「そごう」「三光汽船」「山一證券」「林原」「千代田生命保険」である。これらには共通するものがあるとして5つのパターンをあげている。