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小銭(コイン)不足で社会問題・コロナ下のアメリカ

アメリカ合衆国では最近コイン不足に陥っていて、スーパーやマクドナルド等に行っても現金支払の場合、おつり(小銭)がないので、正確な金額を払うようにとサインさえ出ている始末だ。また、銀行でもコインの交換は大きく制限されている。クレジットカードやデビットカードを持っている人は問題ないが、持ってない人たちにとっては死活問題となる。この影響を受けているのは、銀行に口座がない低所得者層(日本では考えられないが)や現金中心のビジネスオーナーのようだ。

ロサンゼルスタイムズ(LA Times)や Forbesによると、2018年のFRBの報告では、買い物の支払手段は51%がクレジットカードやデビットカード、26%が現金とされている。但し、現金支払の場合、殆どがスターバックスなど10ドル以下の支払いである。一方、日本では考えられないスラム街に住む超低所得者。2017年の連邦預金保険公社の発表によれば、全米世帯の内6.5%は銀行に口座がないUnbankとされる人々だ。これは840万世帯に銀行口座がないという状況である。また、16%の者は、銀行口座はあるが、他の方法で支払等を行うUnder Bankの層となっている。これらの層は銀行のサービスでは日常の生活が出来ない人たちだ。

なぜ、コインが不足しているかだが、これはコロナ感染によりUnited States Mint (アメリカ造幣局)の職員が自宅待機となり、コイン製造が出来なくなった為だとされている。さらに、今回のパンデミックにより、コインビジネスの中心であるコインランドリー、自動販売機、洗車場などが閉鎖され、また、スーパー等でも現金支払を避ける客が増加(日本では、まだまだだが)し、コインの流通がストップして家の中で眠っている状況なのだそうだ。

スーパーで物を購入するにしても小銭がないわけなので、おつり分はスーパーのクレジットとして次回利用時までお預けとなる(これも日本の制度ではない)。またコインランドリーでは、全米でも6割がコインの支払専用なので大きな問題となっている。自動販売機もアメリカではコインのみが殆どで、おつりがない場合には全く売れないということで、状況は思った以上深刻だ。

歴史をさかのぼれば、実はこのコイン不足は過去に南北戦争の時も起きていた。この時は戦争に対する恐怖からコインをため込んだことと、戦争の結果次第では新しい貨幣の価値に懸念があったからだと言われている。その時アメリカ議会は切手を貨幣として使用できる法律を通過させた。したがって、人々は現金ではなく、切手を財布にいれて持ち歩くようになった。その後アメリカ政府は郵便貨幣なるものを製造し、それはビジネスカードよりも小さく、切手のイメージを残し、金額が記載されていた。コイン不足は1890年代の終わりまで何十年も続いたのである。

コイン製造にはコストがかかる。日本でも1円玉を作るのに、その何倍もコストがかかる。アメリカも同様、特にPenny(1セント)と Nickel(5セント)は額面以上のコストがかかっており、1セント硬貨を作るのに1.9セント、5セント硬貨を作るのに7.6セントのコストがかかっている状況だ。造幣局は6月中旬よりフル稼働し、現在、昨年のレベル10億枚を上回る、毎月16.5億枚のコインを製造しているが、その流通率は昨年の17%と大きく下回っており、家庭に眠っているコインを銀行に行き紙幣と交換するか、買い物の際は出来るだけコインを使うよう呼びかけている。日本もその様な状況になるのだろうか。

☆ 推薦図書 ☆
榎本博明著 『教育現場は困っている』 平凡社 800円+税
教育改革を世の中ではよく訴えているが、今行われている改革は、改善なのか改悪なのか、小学校では英会話の授業が行われるようになった。調査によると、その時間を楽しいという子供が多いが、これを根拠に英語教育を推進するのは危険だ。最近、「楽しいかどうか」にとらわれすぎた風潮が広まっている。知識偏重からの脱却が唱えられ、英語教育は読解・文法中心から会話中心へと転換した。そのため、言い回しや発音のハウツーを習うばかりでは国語力や思考力が向上せず、子供たちの英語の学力は一貫して低下の一途をたどっている。私も「英語は読み書きが第一で、会話力は、そのあとからついてくる。」と思っている。会話は慣れだが、読み書きは本人の努力次第であるからだ。著者は、日本の教育改革は、実学を重視する傾向だが、プレゼンなどの実用的なスキルを身につけても、知識や教養、深く考える習慣を身につける事ができなければ、薄っぺらいのに自信満々な人間を生み出すだけだと。同感である。

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