毎年毎年、税逃れのニュースが載る会社も稀であろう。昨年は買収した会社の純資産をゼロにして、その後、子会社に売却して多額の売却損を出したケース。その前も、またその前も海外子会社を利用した租税回避が話題になった。今回も海外子会社を巡る税逃れの指摘である。
一般論を言うと、上場会社の税務調査は5年に一回、あるいは7年に一回が普通だ。ところがソフトバンクグループは、ほぼ毎年である。しかもソフトバンクグループは次々に新しいスキーム考案での租税回避である。次元は高いが、これほど納税意欲が乏しい東証一部上場会社も珍しい。
今回は400億円。このほど東京国税局の税務調査を受け、申告漏れを指摘された額だ。「為替差損の計算ミスや費用計上の期ズレ、タックスヘイブン(租税回避地)にある関連会社の合算漏れなどを指摘された」(日本経済新聞)。これに対して記者会見でソフトバンクグループは「東京国税局より経費計上のずれ、外貨建て負債の為替換算ミスと海外関連会社の所得計上漏れについて指摘を受け、修正申告しました」と発表。
まず170億円に上る為替差損に関する計算ミス。日本の子会社からドル建てで借り入れた負債について間違った為替レートを適用し、結果的に過大な経費計上になったというが、あり得ない話である。今どき中小企業でも円ドルレートの適用を誤る会社は無い。それゆえ、税務署もわざわざ調査で円ドルレートなんか調べない。円換算は通常、一つの指標を用いる。例えば三菱UFJ銀行の公表値を使用するとかであるが、ソフトバンクグループの場合、タックスヘイブンにある会社が多いので、言えば、適当なレートを出してくれる場合がある。つまり、つまみ食いレート適用である。誤ったと言うがケアレスミスではない、確信犯だ。バレることがまず無いはずであったろう。この点、監査法人も責任があるのではなかろうか。
また、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の運営を担う海外子会社への成功報酬140億円についても呆れるばかりである。海外連結子会社に、よくやったと祝儀を弾んだわけだが、このような経費が損金と認められるなら、トヨタもパナソニックも三井物産もタックスヘイブンにある海外子会社に、いくらでも利益移転ができる。お粗末の一言である。そしてソフトバンクグループのタックス・コンサルタント会社やアドバイザーも、毎回指摘しているが、これもお粗末である。このままだと来年も税逃れのソフトバンクグループとなるであろうことは確実。
☆ 推薦図書 ☆
朝日新聞ICIJ取材班著 『ルポ タックスヘイブン』 朝日新聞出版 920円+税
朝日新聞編集局はこの本の副題を「秘密文書が暴く、税逃れのリアル」としている。「上位1%」の超富裕層が、世界の富の半分を独占、世界各地でその「経済格差」が叫ばれる時代。タックスヘイブンの中を覗き込むと、その理由の一端、大企業と富裕層だけが得をする生々しい仕組みが見えてくる。取材班は北大西洋に浮かぶ英領バミューダ諸島にある法律事務所アップルビーの取材から始まって、アフリカ、香港、そしてインド洋のモーリシャスまで取材をし、アメリカのアップル、フェイスブック、ナイキなどがいかにして税逃れに奔走したか、さらに日本人の実名を挙げてパラダイス文書の情報をもとにした取材。
かなりリアリティに書かれている。残念なのは、取材班はあまりにも世界的にグローバルに節税する税務上の知識が乏しかった。無理もない。新聞社で税を取り上げるのは、だいたい社会部などである。税法を知らない。しかし労作ではある。