ブログ

アメリカ確定申告始まる。今年の異変

アメリカも日本と同じくタックスシーズンは始ったが、日本の税務署に当たるIRSでは職員の殆どが日本と違いリモートワークになっている為、多少コロナ混乱が生じている。Forbesで、は2020年の申告書でたった1行だけだが、重要な変更箇所があると報じたのである。それは、「仮想通貨」についての質問だ。2020年に仮想通貨の受け取り、売却、交換等があったかどうか?でYes もしくはNoで答える単純質問である。この質問は、IRSが2008年にSchedule Bで「あなたは海外に金融口座を持っていますか?」という質問と似ている。但し、この質問がSchedule Bというわかり難いものであったのに対し、今回は確定申告書1ペ-ジ目のど真ん中にあり、直ぐに目に飛び込んでくるので、知らないでは済まされない。IRSがいかにこの質問が重要としていることであるかがわかる。この質問で海外口座を所有している納税者は、意図的であるないに拘わらずNoと回答して、結果YESとわかれば、スイス口座の事例のようにかなりのペナルティを課されるのを覚悟しなければならない。
2008年の海外口座の質問は、米国財務省管轄のFBAR(Foreign Bank and Financial Account)を提出しているか否かにも直結した。海外預金口座を隠して見つかると、FBARにはペナルティだけではなく刑事罰も課される。昨年末財務省は近い将来このFBARを修正し、海外の仮想通貨の報告も含めるようにすると発表があった。IRSは仮想通貨はマネーではなく、物(Property)であると定義しているので、本来はFBARでの報告義務はないはずなので、大きな変更である。また、現在のFBARでは最高残高の報告義務があり、仮想通貨の場合1日に5000ドル(50万円)以上相場が動くので何らかの修正が必要となる。
確定申告書上のペナルティは修正申告税額の20-75%となっている。仮想通貨についての質問自体には税金がかかるわけがない、それでは、どうしてこのようなYES、NO の質問があるのか?理由はIRSは納税者を引っ掛けている。つまり、見つかった時に、納税者は知らなかったという言い訳が出来ないようにすると同時に、実際仮想通貨があるにも拘わらずNOと記す理由はただ一つ「詐欺的な仮装隠蔽をしている」に間違いないということの証拠とし、最高75%のペナルティの重加算税を課す為である。
FBARの重加算税もっと厳しく、日本では考えられないが、税額の75%ではなく、課税所得の50%となる。意図的ではなかったとしても1万ドル(100万円)のペナルティが課される。もし今後仮想通貨もFBARでの報告義務が発生するとなると、アメリカ人にとっては、ごまかしがばれたときは、年間所得より高い税金を支払わなければならなくなる。
最後に2020年は株価が乱高下し、株式の売買を頻繁に行った者も多い。アメリカ連邦税法上キャピタルゲイン(株式譲渡益課税)は1年以下の短期では通常の所得税率で課税されるが、1年超の長期では0%、15%、20%の3段階と優遇されている。ところが、これはアメリカ連邦税法(所得税=国税)上のことで、弊所のあるカリフォルニア州での地方税では優遇税率はないのである。つまり、通常の所得税率で課税される。個人のカリフォルニア州税率は高く、最高税率は独身者で100万ドル(1億円)超、夫婦合算で200万ドル(2億円)を超えると13.3%となる。ハイテク系富裕層の集まるシリコンバレー、カリフォルニア州で13.3%というのは大きな課税となる。ここでは1億円2億円の収入のあるものはごまんといるからだ。連邦税率と合わせれば、何と33.3%となる。因みに年収が58,635ドル(600万円)の独身者で9.3%の課税率になるので、この税負担は大変になる(日本人は超高税率なので驚かない)。カリフォルニア州に住むには株の売買も含め税金対策が大問題になっている。隣のネバダ州は地方税がゼロなのに。(ちなみに、日本では9.3%の若者も20.42%となる)。このためキャリフォルニア州を逃げ出す富裕者も多い、かつてのミケルソンなどのように。

☆ 推薦図書。
マーサ・スタウト著 秋山勝訳 「良心をもたいない人たちへの対処法」草思社 1800円+税
一見すると、ごく普通の人、だが、平気で嘘をつき、他人を攻撃する。私たちの身近に潜む「良心をもたない人」の特徴と対処法を臨床心理学者が説いた本である。良心が欠落した個人を「ソシオバシー(社会病質)」と呼ぶ。ソシオバシーは口がうまい上に、一見すると魅力的な人物に見える。だが、彼らは病的なほど嘘つきで悪知恵が働き、他社に対する愛情や誠実さは微塵にもない。例えば、ニセの投資話を持ち掛けて人から金を巻き上げる詐欺師と、身の毛がよだつ連続殺人犯人に共通する点は何か、普通に考えたら、彼らは全く異なるタイプだが、「邪悪」という共通のソシオバシーを抱えている。ソシオバシーの中には、社会的評価の高い職業につくことで、巧妙に正体を隠している者が多い。教師や医者、弁護士などである。専門職に就くソシオバシーは多い。ソシオバシーを見破るのは難しい。彼らは見た目も話し方も普通の人だからである。ソシオバシーは良心を育む能力がないため、ヒトの声や神の恐れ、道徳上のルールが理解できない。そして部下にはイエスマンしか雇わない。自分への恩義に対して忠実だと思える人のみ昇進させるのだ。そうだ

関連記事

  1. 税金滞納者にはパスポートを発給せず。アメリカ
  2. カリフォルニア州の住民税は全米一高い
  3. オフショアを活用した脱税方法、アメリカ発
  4. 相続税・贈与税、来年度はどうなる
  5. アメリカ来年度税制、大統領でこう変わる
  6. 世界の富裕者が嫌がる日本の相続税制
  7. 恐るべきアメリカIRS Part 2
  8. エリザベス女王の相続税

アーカイブ

PAGE TOP