Financialtimesによれば、コロナ禍に伴う財政出動による税収不足を補うため、現行の法人税率19%を2023年に25%に引き上げ、法人税以外の税も検討の対象にするとイギリス政府が発表した。同様に被害を被っているEU諸国も増税に追随すると思われる。今、日本は通常国会の真っ盛りだが、野党の質問を聞いていても、コロナに対しての策がないのはわかるが、給付金、補助金などの財源手当てをどうするかの質問が全くない。カネの成る木があるわけではない。赤字国債発行も天井に近づいている、立憲民主党などの野党は週刊誌ネタの質問ばかりで政策がない。困ったものだが、背に腹は代えられないので、今年12月の来年度税制改正大綱ではずらっと増税案が並ぶのであろう。
見方を変えると、今回のイギリスの増税は、ある種企業にとっては朗報かもしれない。タックスヘイブンに支店や子会社を置くと、ややもすれば、その子会社の利益を日本本社の利益とみなされて合算課税される恐れがある。いわゆるタックスヘイブン税制である。タックスヘイブン国とは、どれくらい税金が安い国かといえば、日本の法人税率の半分以下の国と決められている。ケイマン、パナマ、はもとより、香港、シンガポールなど法人税率が20%未満の国々である。イギリスは2017年に19%となり、これらのタックスヘイブン国と同様の扱いを受けるようになった。ところが今回の改正で「税負担割合20%未満」の国ではなくなり、イギリスに子会社を置く日米企業は、合算課税を逃れるための「経済活動基準」を満たす必要がなくなる。2017年以前は日本企業がヨーロッパに地域統括会社を置くのは、イギリスかオランダと決まっていたが、その後、イギリスが20%未満となったので、税率25%のオランダが独占状態。しかし今回の改正で同率の25%に並んだため、イギリスに地域統括会社を置く企業が出てくると一部報道されたが、私はそうは思わない。それはBrexitである。Brexitは“British”と“Exit”の混成語である。イギリスの欧州連合離脱が深く影を落としている。金融はもとより物流も障壁だ。イギリスにフレンドリーなのは一部欧州懐疑派だけで、いまや親欧州派の方が圧倒しているのだから、イギリスに着目する企業はないのではないか。ただし、今後EU諸国がコロナ禍で税率を引き上げ始めるとわからない。
☆ 推薦図書。
伊集院静著 「ひとりをたのしむ」 講談社 909円+税
氏の著作は何冊か読んだが、氏は私と同世代なので、いよいよ人生の教訓めいた本かと思いきや、なかなか枯れない人だと思った。この本の表紙に「大切な人が消えていく。悲しみが過ぎたら、ひとりもいいものだと、思った。」「人は誰でも別れ、離れ、ひとりになる。そして誰にも静かな時間がやってくる。喧騒が消え、孤独が友となる。ひとりのときをじっと味わう。人生、こんなたのしみもあったのだと、気づく。」こんな哲学じみたうたい文句の本だが、彼らしい、納得し、自分もそう思うフレーズがある。彼はゴルフが趣味のようだが、「最近わかったことだが、優秀な経営者はすべて、イラチで、短期で、瞬間湯沸かし器である。ゴルフを一緒にしていても、前の組の進行が遅いと、何だ、あの連中はバカなのか、」とののしるが、著者曰く、ゴルフが遅いプレーヤーは、作家でも、経営者でも、職人でも、全員役立たずであると。私も全く同感である。私が著者の本をよく読むのは、実は、彼は、一貫して親孝行である。成功した人は間違いなく親孝行である。次に、どうでもよいことだが、大の犬好き、東北一のバカ犬といっているが、彼は間違いなくペットロスになる。