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不動産の相続税評価、日本とアメリカの違い

国税庁はこのほど令和3年分の路線価を公表した。全国平均路線価はマイナス0.5%で、6年ぶりの下落。新型コロナウイルス感染症の影響で全国的に下落傾向にあると報じた。この「路線価」なるものは世界で日本にしかなく、日本中、道という道に値段がつけられている。何のためにかというと、相続税(贈与税)の算定のためにだけあるのである。宅地を相続した場合、課税価格はいくらかであるかを算定するためである。国税庁は、路線価は時価の80%としているとしている。路線価の日本一はいつも東京の銀座5丁目の中央通り交差点である。大阪では阪急梅田、角田町の御堂筋交差点である。今年は、銀座は1坪1億4千万円。梅田は1坪6500万円である。この銀座の土地1坪でも持って死ねば相続税がかかるのである。時価の80%が路線価だとすれば、時価は1坪1億7500万円という事になるが、それでは、時価とは何かというと「その時に成立している市場価格」という定義がある。相続税法第22条に、宅地を持っている人が無くなった時に、その宅地を評価額は、その死亡時の「時価」としている。その時価とは、税法では「国が定めた財産評価基本通達の定めによるとある。その財産評価基本通達には「路線価」が時価だと、うたっているのである。そうすると時価が本来「その時に成立している市場価格」とは程遠い、政府が決めた価格に従えという事になる。しかし、国税庁が公表した路線価だが、最高路線価の銀座も阪急梅田の交差点前も半世紀にわたって土地取引が無い、それだのに何故、1坪1億4千万が時価だと言えるのか不思議である。「市場価格」は国が決めるものではない。ここは中国ではない、亡くなった時には相続人が不動産鑑定士などに依頼したうえでの時価の決定が本来であろう。税務当局がその価格に不満であれば争えばよいではないか。ちなみに、アメリカでは土地の相続税の評価はどう法律で規定しているかというと、Internal Revenue Code(連邦税法)2031-1には以下の通り書いてある
(b) Valuation of property in general. The value of every item of property includible in a decedent’s gross estate under sections 2031 through 2044 is its fair market value at the time of the decedent’s death, except that if the executor elects the alternate valuation method under section 2032, it is the fair market value thereof at the date, and with the adjustments, prescribed in that section. The fair market value is the price at which the property would change hands between a willing buyer and a willing seller, neither being under any compulsion to buy or to sell and both having reasonable knowledge of relevant facts. The fair market value of a particular item of property includible in the decedent’s gross estate is not to be determined by a forced sale price.・・・・・・・
つまり、不動産の評価は、亡くなった日の公正な市場価格であり、積極的あるいは自発的な売り手(
Willing seller)と自発的な買い手(Willing buyer)の間でのみ成り立つ価格で、強制されて売買される価格ではない、それが市場価格(Fair market value)であると。そのためにプロの不動産鑑定士を入れる。日本の場合は、令和3年の路線価は、その年に亡くなった人、1月1日に亡くなろうが12月31日に亡くなろうが同じ価格で不動産を評価しろという事である。しかも、誰も鑑定評価しなくて。土地や建物の評価は「時価」とは言いながら、全て、お上(おかみ)が決める、それで文句を言わず多額の相続税を納める、こんな従順な国民は日本人しかいないのではないか、コロナ禍の最中、首都圏の感染者が増加傾向にある中、だれもオリンピック開催に体を張って阻止しようとする日本人がいないのも当然かもしれない。

☆ 推薦図書。
山田昌弘著 「新格差社会」 朝日新聞出版 825円+税
社会の格差は、何も経済面だけではない。「家族」「仕事」「教育」など基礎的なことまで広がった。昔は30歳までに結婚し子供を育て社会に出し、老後を迎える「戦後型家族」、いまや若者の収入低下や未婚者の増加によりその制度は崩壊した。これからの働く者には、ITスキルや英語能力が求められる。これらの習得には家庭のしっかりした経済基盤が必要である。小学生で塾に通い、中高一貫教育の私立校に通った子は、大学を出て一流企業に勤め、社会の上層部を占める。つまり、親の経済力が子の社会に影響し格差を助長する。この教育格差が今や日本では固定化してきた
そしてコロナウイルス感染症の影響で、リモートワークなるものが出現したのである。今までに経験したことがない世界である。しかし、それで、コロナ社会で日本の格差が「可視化」されたのである。つまり「リモートワークが可能な仕事」と「不可能な仕事」の格差を生んだ。生産性向上の可能性で考えると、前者は高いが後者は低い。コロナはこのように「資産を持っている者」に富を増やす機会を与え、「持たざる者」との格差をさらに増大させた。
この本も解説はわかりやすく書いていて一気に読んでしまう。お勧めである。

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