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退職金優遇税制が無くなるか

経団連が来年度税制改正について、退職金優遇税制はそろそろ考えないといけないと提言している。退職金は一般給与と異なり、退職所得控除をした上に、2分の1を控除するので、所得は2分の1以下になる。しかも分離課税だ。そのため天下り官僚は、退官後、次々に会社を渡り歩き「給料は低くて良いから退職金をたくさん」というのが流行った。2012年の改正で、在職期間が5年未満の優遇税制は対象外としたが、サラリーマンにとってはありがたい税制である。もともと優遇の立法趣旨は、退職金は給料の後払いの性格で、長年勤めあげてきたのに、一時に課税するのはかわいそうだという戦後の法改正で成立した。しかし、コロナで財政は緊迫し、このままでは税収も限度があるので、政府も何かしら増税を打ち出してくるのは必至である。また経団連が提言した背景には、長期雇用や終身雇用の奨励は、従業員の転職を阻害し、雇用の流動化を妨げる。退職金制度があるために定年まで会社にしがみつく、リストラできないという事情もあるようだ。しかし、この退職金優遇制度がある国は、私の知る限り日本以外一か国もない。OECD加盟国もない。日本に進出している外資系企業もない。これは日本の退職後の生活安定のための制度であり、私は生命保険と並んで一家の安定のための日本独特の制度であると思っている。欧米では年金が充実しているのでこのようなことはない。日本は国が貧しいのである。アメリカなどは、公的年金に加え、私的年金や401Kという企業も負担しなければならない年金積立制度があるが加入は任意である。政府はサラリーマンへの増税措置として税率は上げないが「所得控除」を大胆にカットしてきた。次は「退職控除」である。そもそも従業員がやめるのに退職金を支払うと言った思考がアメリカなどには皆無である。アメリカでも退職金に似た報酬を支払う場合はあるが、解雇紛争の解決手段に限られるのである。
30年間サラリーマンの給料が増えない日本で、今度は退職金の手取りが大幅に減る。これではGDPも増えない。ますます貧しくなるのだろうか

☆ 推薦図書。
ケイト・マーフィー著 松丸さとみ訳 「LISTEN」日経BP 2420円
あなたが最後に、誰かの話に耳を傾けたのはいつだったか、覚えているだろうか。現代の私たちは、相手の意見など、お構いなしに、自分が言いたいことだけを話すという会話を繰り広げている。家族との食事の時もそうである。耳を傾けるのは、話すことよりもずっと大切である。聞くことはプライベートであれ、仕事であれ、人間関係がうまく行くための土台である。最近の人間関係がうまく行かない原因の一つに携帯メールなどがある。メッセージごとに、どれだけ時間をかけられるかを、自分で決めることができるし、面白くないと感じたメッセージは無視できる。カフェやレストラン、さらには家庭での食卓でも会話を楽しむというよりはスマホに見入るという現象があちこちに生まれる。この本の原題は「You’re not LISTENING」である。人は、ひとに話を聞かれないと孤独になる、その孤独はますます広がり、おかしな犯罪がふえる。

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