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居住者、非居住者の判定に滞在日数が決め手に?(東京地裁)

2週間前の判決である。この事件は原告(納税者)が所有するシンガポール法人(S社)から残余財産の分配を受けたが、シンガポールでは個人所得には該当しないので何ら税負担はなかった。よく使う手だ。原告はシンガポールのPermanent Resident(永住権)の権利を取得して、シンガポールの住所としてアパートを借りていた。S社の代表取締役として役員報酬を取っていて、原告の財産のほとんどはシンガポールとアメリカにあり、日本にはほとんどなかった。ところが、突然、税務署からS社からの分配金を申告していなかったとして所得税の決定処分を受けたのである。無申告なので多額の納税になる。原告はシンガポールの居住者であり、日本の非居住者であるので、日本で申告の義務はないとして争った。
このほど、東京地裁は、原告は日本居住者だとして原告の主張を退けた。その理由は大きく分けて3点である。①原告は日本での滞在日数は1年の4分の3にあたる271日である。②原告はシンガポール法人の業務に関しても、日本のM社(原告の事実上の所有会社)から指示を出すか、妻名義のマンションで報告を受け、S社をコントロールしていた。➂原告は日本に資産を有していない理由は過去に多額の追徴課税を受け、国税から差し押さえを免れるために海外に資産を移転した。などを勘案した結果、東京地裁は、原告の生活の本拠が日本に無かったことをことを必ずしも意味しないなどと指摘し、原告の生活の本拠たる住所は日本国内にあったとした。
住所の内外判定については、「滞在日数、住居、職業、生計を一にする配偶者や家族の居所、資産の所在地等を総合的に考慮して判断」されると、例の武富士事件での最高裁の判断である。今回の東京地裁の判断は、報道では滞在日数を言うが、そうではないだろう。短い滞在日数でも日本非居住者はいくらでもいる。国税当局は原告が過去に大きな脱税事件を起こし、しかも差し押さえ逃れで、国外に財産を逃がした、いわば前科者である。これが大きな決め手になったと判断できる。教訓として過去に重加算税を受けたり、税金を踏み倒したものを国税当局はしつこく追い続けるのである。これも課税の公平か?

推薦図書。
久坂部羊著 「人はどう死ぬのか」 講談社 990円+税
著者は阪大医学部卒の医師兼小説家である。誰しも死の恐怖はある。しかしそれは実態のない幻影であり、人は死んだら何も感じない、死は、目が覚めない眠りのようなもので、死後には何もない。従って死の恐怖などはないと考える。ただ死ぬ前の事を考えると、若い時から健康に気を使ってきた人は内臓が丈夫で、心筋梗塞や脳卒中になりにくい、その分、晩年医療にかかると簡単には死なせてもらえず、老いの苦しさを抱えたまま、人生の最後を迎えることになる。
「がん」についてでは、著者は大変興味深いことを書いている。がんは治らないが死なないという病になったが、転移は気にしないことだ。転移を気にするあまり、強い抗がん剤を打つと寿命を縮めることになる。生検(鉗子で腫瘍の一部を採取すること)は大変危険である。なぜなら生検で腫瘍の一部を取る際、剥がれたがん細胞が出血部から血管内に侵入し、転移する。多くの医師は知っているが、患者に言うのはタブーとなっている。恐ろしい話だ。最後に
日本では安楽死が認められていない。そのため死ぬに死ねない患者が、無意味に、ただ苦しむだけの命を引き延ばされている。
考えさせられる本である

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