タックスヘイブン税制というのがある。アップル、アマゾンなどアメリカ巨大企業などでは常に問題になっている。つまり税金が極端に低い国に本社や子会社を置き、そこに利益を集中させ税負担を極端に減らせる。そこで実質上の本社機能のある国は低課税国の利益も本国の利益とみなして合算して本国税率で課税するという「合算課税」が行われる。タイヤメーカー世界大手のブリヂストンがこの合算課税を適用されたのである。具体的に言うと南アフリカにある子会社に低課税国に子会社を設立させ、つまり孫会社を設立し、そこに子会社から貸付を行い、貸付金利を取らなかった、これすなわち孫会社に支払うべき利息を支払わせない「利益移転」が行われたということである。日本の法人税法では無利子貸付は原則、利子額は収益とみなされるが南アフリカにはどうもこの手の税法が無かったようで、長年そうしてきていたらしい。しかし日本の国税当局はこの額3億円は益金参入と決定した。
しかしタックスヘイブン国に子会社等を建て合算課税の対象とするのは、その子会社に事業等の実態がないなどにかぎられ、しかもタックスヘイブン国の基準は日本から見ればあまりにも税負担が少ない国に限られ、税負担率は日本の半分以下の国に限られていた。日本の法人税率等が50%の時は25%以下の国、その後40%になった時には20%以下の国が対象となったが、その後EU諸国で企業誘致のため税率引下げ競争などがあり2017年に、この基準は事実上廃止された。従ってタックスヘイブン税制を適用の有無は事業実態があるかどうかで判断されるのだが、どうも最近の国税当局はそのあたりを明確にしないで課税する。ブリヂストンにしてみれば少額で争いたくなかったであろうが、他の海外進出企業にしてみれば、これが課税慣習になるのを怖がっているようである。
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☆ 推薦図書。
榊原正幸著 「60歳までに『お金の自由』を手に入れる! PHP研究所 1067円+税
著者は会計学者で青山学院大学教授である。人生100年時代、2022年時点で10代の人は2人に1人が107歳まで生きる可能性がある。今30歳代の人は2人に1人は100歳まで生きるという事だが、2人に1人はそこまで生きない。事実2021年において60歳の男の平均余命は24年ということになっている。多くの人は75歳まで働くようになるだろう。しかし60歳くらいになると、それまでイヤじゃなかった仕事もイヤになってくる。その時までに「辞めようと思えばいつでも辞められる」環境を作っておかねばならない。つまり経済基盤だ。その必要資産額算出に必要なものは①リタイア後に、家族が満足する生活費はいくらか ②自分がする長期達成可能な運用利回りは年率何%か ➂家族が受け取れる年金の総手取り額は月いくらか
だそうである。会計学者らしい発想である。