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相続税・贈与税、来年度はどうなる

秋のシーズン到来と同時に、自民党税制調査会の審議が始まった。ロシア・ウクライナ戦争をはじめ、中台関係、北朝鮮のミサイル問題などから、日本の防衛費が確実に増大する、その財源を確保しなければならないので、個人の増税を審議の冒頭から持ち出す始末である。特に富裕層に負担をお願いすると、宮沢洋一会長が挨拶で述べた。ということは富裕層にしか関係ない相続税・贈与税を増税するという意味であろう。
相続税の基礎控除は標準世帯にあっては4800万円である。4800万円以上の財産を持って死ぬと相続税がかかる。アメリカでは2200万ドル、今の為替レートでは30億円以上持っていないと相続税がかからない。日米雲泥の差である。アメリカと違って、金持ちを優遇しない日本であるが、来年からもっと拍車がかかる。生前贈与で優遇されてきた、住宅取得資金の贈与は縮小されるが、教育資金の一括贈与非課税制度も、来年期限を迎えるので廃止に近い形になる。贈与税は、日本では暦年課税方式(年間110万円まで非課税)と相続時精算課税制度の2種類がある。相続時精算課税制度は、生前贈与分は死亡時に相続財産に合算課税されるが、暦年課税は死亡前3年以内の贈与だけが相続財産に合算課税される。このようなことから、いかにうまく相続対策としてこれらの方式を組み合わせるかが節税対策の大きな柱となる。日本は贈与税・相続税の最高税率は55%だが、直系尊属からの贈与税率と、それ以外からの贈与税率が異なる、相続時精算課税制度の税率は20%、相続税率は10%から55%と4種類の税率が存在するが、相続税があるアメリカやドイツ、フランスなどは相続税・贈与税の税率表は一つである。これは相続税・贈与税の税負担は中立だという事だ、つまり生前贈与をしてもしなくても、亡くなった時に清算すると、同じ税負担になるということである。日本は死亡前3年以内の贈与は合算されるが、ドイツは10年、フランスは15年、アメリカは無期限であり、生前の贈与に関わらず、相続税を一体課税するのが先進国に多い。自民党税制調査会は、日本の3年を5年か7年か10年に延長することも考えているようだが、相続税に合算課税されるのは、贈与したときの課税価額である。デフレ状態の日本で、値上がりする財産を考えると、東京の一部の不動産だけではなかろうか、令和5年税制改正で、生前贈与する者は極端に減るのではと思われる。

☆ 推薦図書。
セバスチャン・ハフナー著 瀬野文教訳 「ヒトラーとは何か」草思社 1078円
プーチンの影響でこの本を選んだ。ヒトラーは何を目指し、何をなしたのか。彼の親は高級官僚で死んだが、ヒトラーは落ちこぼれで、美術学校受験に失敗し、25歳まで定職につかず、遺産で食いつないでいた。第一次世界大戦が勃発すると志願し、4年間兵役についたが上等兵どまり。30歳の時、小さな極右政党に入った。それが政治活動の始まりだった。ただ彼の唯一の能力は演説のうまさだ。大衆を、ある種の恍惚状態に陥らせることができるのだ。彼の世界観では、ドイツ民族は戦争に勝利して世界を支配しなければならない。ユダヤ人は人類を雑種だらけにして支配しようとしているので、根絶しないといけない。と主張し、そしてドイツの支配者になったが、ヒトラーに欠けていたのは、国家繁栄のために、私心を捨てて献身する態度である。この男は、はじめから、国力を自分の思い通りに総動員するために、国を利用しただけである。己の私欲を満たすためにドイツ国家を奉仕させたのである。と著者は結論付けているが、何やらプーチンどダブルようでもある。

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