モノを買うと本体価格に10%を上乗せした代金を払うことになる。事業者はその上乗せして受け取った10%の消費税は、確定申告の際、支払った消費税額を控除し、差額を税務署に納める。つまり業者は受け取った消費税から支払った消費税を引いた分を税務署に納めるのであるから、消費税では損も得もないのが原則である。ところが日本では年間売上高が1000万円未満の業者は、そのもらった消費税を税務署に納めなくても良いとする「免税事業者」が多数存在する。いわゆる益税で、消費税分10%まるまる利益となる。こんな公金横領罪のようなものは許せないと、財政事情が悪化している日本では、益税防止のためインボイス制度をやっと導入、来年10月からである。通常支払った額には10%の消費税が含まれているものとして、仕入税額控除をしていたが、免税事業者に支払った場合には、それを認めないとする制度である。私は免税業者ではないとするインボイス制度に登録すると、ナンバーがもらえる。それを領収書に貼っていないと課税事業者と認められない。またインボイス制度に登録すると消費税の申告をしないとならないので益税がでない。町の喫茶店や定食屋、ケーキ屋などで、家族経営の零細業者は免税業者は多い。しかし会社はそのような免税業者から買ったら10%の仕入税額控除が出来ないので、免税業者に支払うのを避ける。交際費もそうだ。いわゆる士業と言われる、弁護士、会計士、税理士、司法書士、社会保険労務士なども、実は免税業者は多いが、これらたとへ今、免税業者でも、インボイス制度に登録しないと大会社との取引が出来ない。無理をしてでも課税事業者としてインボイス制度に登録するであろう。個人タクシーなどは大変である。インボイス制度に登録していないタクシーに乗ると、会社の清算で仕入税額控除が出来ないので大手のタクシーを探すようになる。個人タクシー協会の発表によると、タクシーの表示灯に、このタクシーはインボイス制度に対応したタクシーかどうかをわかるようにすると言っている。笑えるようだが、個人タクシーにとっては死活問題である、財務省のお偉方はこの現実をご理解しているのかが、本当の問題である。来年10月の実施だが、岸田内閣の支持率が20%を割ってくると、零細業者の抵抗が多いこの制度を実施できるかどうかが今問題になっている、私は出来ないのではないかと思っている。
☆ 推薦図書。
野口友紀雄著 「円安と補助金で自壊する日本」 ビジネス社 1650円
著者は有名な元大蔵官僚で東大教授でもあった。この著は突然襲ってきた物価高、これはもちろんロシアのウクライナ侵略のせいだが、これが原因で世界中がこのインフレに喘いでいるが、日本は物価の高騰は勿論だが、円安の放置、補助金の多用などで経済の方向性を失い、とんでもない事態に陥る可能性がある。今まさに円安、3月には1ドル115円だったのが今や140円、この対策をしなくて、ガソリン代に補助金を出すなどの一過性の対策しかしていない。円安を止めるのは金融緩和からの脱却でしかない。しかし円安を止めるための議論は国会でもない。しかし日銀は円安を放置している。何故か、それは黒田総裁が金利を上げると、日銀が保有する大量の国債が評価損を計上し、債務超過に陥るからだ。そのための低金利政策である。そのため円からドル資産に乗り換える「キャピタルフライト」が今後ますます増えるだろう。そうなると円安がますます進み国内物価が上がり、インフレが発生し、国が破綻する危機に陥ると。この著は述べている。