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日本の相続税対策、様変わりか。

今月、令和5年度税制法案が通常国会に提出される。予算案とセットだが、岸田内閣の目玉の一つが「成長と分配の好循環」である、なかでも相続・贈与税関係の改正に注目が集まった。そもそも日本は4800万円以上の財産を残すと相続税の課税対象となるのである。アメリカでは15億円以下の相続や贈与に課税しない、日本は自宅を持っていればそれだけで相続税の課税対象、ましてや生命保険もその対象になるのであるから、普通の生活を送っている者の大半が相続税の対象となるのである。相続税の負担軽減の意味で、生前贈与をする。贈与するにあたって、日本国民は2つの方法のどれかを選べる。一つは「暦年課税」これは毎年110万円の基礎控除があり、これ以下だと贈与税がかからない、もう一つは「相続時精算課税制度」で、累積2500万円までの贈与については贈与税がかからないが、それをオーバーすると一律20%の課税だ、しかし亡くなると今までの贈与が相続財産に合算され、相続税の対象となるが、今まで納めた贈与税は相続税から差し引かれる。
もともと贈与税は相続税逃れのために生前贈与するのを防ぐためできたものであるので、相続税率よりも贈与税率の方が累進性が強い。しかし余命いくばくとなった場合や、高齢になると相続税対策のために生前贈与する場合は多い、それを防止する意味で亡くなる3年前の贈与は相続財産に合算することになる(相続税法19条)。従って贈与してから3年以内に亡くなると、何の効果もないが、今回の税制改正でこれが7年になる。そうなると、贈与してから8年は生きてくれないと、贈与は水の泡となる。この法律の施行は令和6年からになるので、今年令和5年は贈与が殺到することになるだろうことは想像に難くない。わずか全財産が4800万円の人にまで襲い掛かる相続税、子孫に残すわずかな贈与税対策までにも完全に封じ込める日本政府、G7が広島で開催されるが、日本の突出した相続税・贈与税率は問題にならないのだろうか、かつて一度だけあった、イギリスサッチャー首相が中曾根康弘首相に、日本の所得税率、相続税率は高すぎる。これが中曾根首相を動かし、間接税導入の切っ掛けになり、売上税はとん挫したが昭和63年の消費税導入につながったのである。今回も北朝鮮や中国の脅威に関して、防衛費が増加するので富裕層課税を強化しそうになったが、止めた。税で補うとしたらヨーロッパ諸国と同じく消費税を増税するのが筋である、貧富の問題ではなく、国民みんなの脅威であるからである。

☆ 推薦図書。
黒川清著 「考えよ、問いかけよ 『出る杭人材』が日本を変える」 毎日新聞出版 1650円
著者は東大医学部卒の元UCLA医学部教授である。氏によれば、この30年間、日本の政府がバカだったことになると著者は感じた。世界が変わっているのに日本だけが旧態依然としている。まず日本の大学の国際競争力が著しく低下している。2022年版の世界大学ランキングで200以内に入っているのは東京大学と京都大学の2校だけである。これらの大学の学生でさえ、自ら考えて意見を述べ、議論することがほとんどない。大学は、海外留学を推奨して多様性を獲得し、学生の可能性と意欲を引き出すべきだ。科学分野においても、この20年間、先進国は研究開発費を増加させているが、日本だけが横ばいである。自然科学分野の論文数、世界で発表される論文数は2020年には190万本、これは1981年の4.7倍にあたる。2004年は日本は2位だったが、今や中国、アメリカ、ドイツ、インドに次ぐ5位に転落した。多くの日本人は受験勉強をして大学に入り、就職し、そこから、ほぼ動かずキャリアを積み重ねる。このような単線路線のエリートが組織のリーダーになっているのが問題である。この結果、コロナ問題でも何一つ世界をリードする案が日本から出てこないではないか。と。同感である

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