まず、CFC(Controlled Foreign Company)税制とは、低課税国に外国子会社等を設立してする租税回避を防止するために、一定の条件を満たす外国子会社の所得を日本の親会社の所得とみなし、日本で課税する制度である。いわゆるタックスヘイブン税制である。そのことで日本で新たな判例が出た。
同族会社という言葉がある。これは1族で株式の50%超を所有する会社の事である。日本独特の用語であるが、税法上極めて思い言葉で、税務署の調査の際、伝家の宝刀と言われる「同族会社の行為計算の否認」である。これは普通の上場会社では、このような処理が出来ないのに、このようなことができるのは、一族で会社を支配しているからでできる。つまり経済合理性がないのにできることだ。例えば、めったに会社に来ないのに、社長の奥さんであるから高級を支給している。あるいは、非常識な高い退職金を支払ったとか、社長個人の交際費を会社で落としているとかである。上場会社であってもソフトバンクグループもそれで課税された。
このほど東京地裁で出た判決である。シンガポール現地法人を、現地シンガポール人と日本法人が設立した、出資比率は50%50%であるので子会社にはならない。完全支配できないからである。ところがであるCFC税制の適用を受け、タックスヘイブン子会社として、日本法人に課税されたのである。この相手のシンガポール人は日本国籍を持たず、日本に居住してないが、このシンガポール人の親族が、たまたま日本に居住していたので「特殊関係非居住者」に該当し50%超を満たしてしまうということになった。何故なのか?
親族、同族とは一体なんだということに、日本の税法には明文規定がないが、民法によることになる。「同族会社の行為計算の否認」規定の最大の形式的理由は、同族という親族に該当すれば、そのトップの意志に皆、例外なく従うという事だ。同族集めて51%になれば、誰も異論なく同一の意見、行動に出るということである(時代錯誤というより根拠が不明)。同族・親族とは民法では①6親等以内の血族②配偶者➂3親等内の姻族、となる。6親等内の血族と言えば、いとこは4親等、いとこの子(またいとこ)も入り、3姻族であれば妻(夫)の姪、甥も入る。民法に従えば、親族の数が何十人と言う者も珍しくない。私などはあったこともない、いとこの子もいる。町ですれ違っても、誰だかわからない親族もいる。外国の会社の株主の誰かが、日本に居住していなくても、この親族の誰かが日本医にいるとなれば、CFC税制が適用されるのである。欧米でこのような規制が通用するだろうか。日本もそろそろ時代遅れの同族関係者の定義を改めないといけない。相続で親子、兄弟姉妹が揉める日本。親族が一丸となって意見意思を1本化するはずがない、アメリカではファミリーだけが日本の同族に該当する。同居していない兄弟は含まれない。CFC税制は世界共通のモノ。親族。同族の定義も世界標準にしなければならない。
☆ 推薦図書。
高橋裕貴著 「追跡 税金のゆくえ」 光文社 946円
我々納税者が納めた税金はどのように使われているのか。先進国最大の借金を抱える日本が犯罪ともいえる無駄な財政支出を繰り返す実態を、元経済部記者の著者が明かす。この前コロナ対策の一環の「持続化給付金」を国が支給したが、この事業を一括委託した「一般社団法人サービスデザイン推進協議会」が、電通と電通の子会社などに再委託と外注を繰り返していた事実が判明し、委託費、外注で、「中抜き」が煩雑に行われていた。一般社団法人には監督官庁がない。税制優遇を受けながら決算内容や業務実態の報告が行われない。また東京オリンピックの大会経費は当初予算の2倍の1.7兆円。最大の原因は東京オリンピックが外部に委託する経費だ。問われなければならないのは「人経費単価」である。一般であれば1人1日6~7万円なのだが、東京オリンピックが、電通なので構成する企業連合会には、それが1人1日30万円であった。このように公金の無駄使いと甘い汁を吸う民間のなれ合い。発注元はほとんど経産省、受けるのは電通をはじめとした大手広告代理店という構図。読んでなるほどなる。