今や都心のマンション販売価額は2億円やそれ以上の価額で売買されるものは珍しくなくなった。原因の主なものは相続税対策である。相続税の計算のもとになるのは財産評価基本通達、つまり建物は固定資産税評価額。土地は路線価である。例えば鉄骨鉄筋コンクリートであれば、日本のどこであれ評価額は同じ、青森であれ鹿児島であれ東京の青山通りであれ評価額は同じ、しかし時価が違う、時価と相続税評価額の乖離を狙うのが相続税対策。そうすると時価が坪200万円と坪1500万円も相続税評価額の坪単価が変わらないとすれば富裕層は高い方を狙う。しかも同じマンションでも低層階も高層階も固定資産税評価額が変わらないのに高層階は抜群に高い。結果、都心高層階のマンションを例えば3億円で買えば、相続税評価額が5000万円というのも出てきた。税の公平化を損なうとして、国税庁はタワーマンションの相続税評価の見直しを提言しだした。
具体的にはマンションの相続税評価額がそのマンションの時価の6割に満たないものは6割の評価額とするというもの、時価が3億円、相続税評価額が5000万円であっても、相続税評価額を1.8億円とする。なぜ6割かというと、一軒家を建てた場合は、だいたい時価の6割が相続税評価額という統計になっているというからだ。
平成29年にタワーマンションの低層階と高層階が同じ固定資産税負担というのはおかしいということで、同じ面積でも固定資産税負担割合が異なるという地方税法改正がおこなわれた。これは平成29年1月2日以降建設されたタワーマンションが対象だが、ここでタワーマンションの定義が行われた。高さが60メートル以上、法律用語で「居住用超高層建築物」と呼び、あくまでも居住用だけであり、その他の用途に供する建物は対象外である。
ここでまた新たな問題が出てきた。この相続税の改正は、いつから施行するのかである。例によって「駆け込み需要」が起こるのではないかと。しかし何といっても見ものは、改正後、相続税節税に使えないマンションの時価が暴落するのではないかと危惧している大手マンション業者が多いことである。ある種のバブルが崩壊するのか
☆ 推薦図書。
栗本慎一郎著 「脳梗塞になったらあなたはどうする」 たちばな出版 1300円+税
随分古い出版だが、親しい東証プライム市場上場のオーナー経営者から頂いた。著者は大学教授から国会議員になり、脳梗塞で倒れた。それから、彼は脳卒中について研究に研究を重ね、普通の医学書のレベルを遥かに超える医学専門書を書いたのである。この本を読んでおけば安心出来る。なる前に読めば予防になり、なってから読んでも勇気がでるというもの。著者が脳梗塞になった自らの経験と、その後の猛烈な研究を経て、脳梗塞の発見法、予防の仕方から、闘病、リハビリ、社会復帰の仕方を命がけで案内する。小渕恵三首相の脳梗塞での死。脳梗塞と脳出血、そして、くも膜下出血の三つを合わせて脳卒中というが、いずれも脳の血管障害からくる病気は死亡者総数の16%を占める。死ななかったとしても、重い後遺症が残る結果、脳梗塞は寝たきり病人の4割を占める。このようにならないための、書である。為になる。