山本由伸選手もドジャーズと契約合意ということで、大谷の入団と共に今後面白くなりそうなドジャーズだが、アメリカでも大谷選手の入団交渉については本当に謎に包まれていた。ドジャーズの契約合意が発表された後も、飼い犬の名前がまだ謎だと各メディアが大騒ぎし、ドジャーズだからドジャードッグ(ドジャーズ球場で売られているホットドッグの名前)だと冗談も飛びかったが、入団記者会見でデコピンという名前が判明、アメリカ人からみれば、何だその名前はという、苦笑い的な結果となった。
大谷選手の契約金は10年で7億ドル(1,000億円)という超大型契約だったが、今後10年にわたり年間7000万ドル(100億円)を受け取るものではなく、今後10年にわたり年間200万ドル(3憶円)、残りの6800万ドルは繰り延べし、2034年から2043年にかけて年間680万ドルを支払うという契約である。最後の支払いが終わる時には大谷選手は49歳になっているのだ。
今回の契約ではこの繰り延べ金に対し、大谷選手は金利をもらわないと主張したので、名目上の契約金は700百万ドルだが、金利の高いアメリカで、現在価値で計算してみると4600万ドル(700億円)ほどになるようである。このアイデアは大谷選手がドジャーズに良い選手の維持及び獲得が出来るよう計らったとされ、大谷選手からドジャーズへのプレゼントだとアメリカメディアは言っている。お金よりも野球が好きで、勝って優勝したいという大谷選手らしい契約ではなかろうか。最も、これとは別に、大谷選手はスポンサー契約でシーズン毎に4500万ドル(67憶円)の収入があるとされているので、このような寛大な契約もOKということだろう。
税金面から言えば、現在の連邦税の最高税率は37%だが、議会が何もしなければ2026年から39.6%に上がる。また、大谷選手が住むカリフォルニア州の最高税率も現在は13.3%だが、2024年から14.4%となる。カリフォルニア州に居住していれば、連邦税と州税で50%以上持っていかれる計算だ。6800万ドルの支払いが10年後から始まるわけなので、大谷選手は税率の高いカリフォルニア州を離れ、州税のないフロリダ、テキサス、ネバダ、ワシントン州へ移住しているかもしれない。
また、1996年の連邦法で州はいかなる年金もしくは類似した基金からの収入に対し課税出来ないという法律があるが、その適用を図るかもしれない。大谷選手であれば一流の税法の弁護士を抱えているわけだから、その心配の必要はないのだと思われる。ただ、カリフォルニア州の税務当局Franchise Tax Board(FTB)は州を出ていく納税者には厳しいことで有名である。特に、州外に引っ越した後、大きな収入を得た元居住者に対しては必ずと言っていいほど税務調査を行う。カリフォルニア州居住者は全世界の所得を申告しなければならない。州外に住んでいたとしてもカリフォルニアを源泉とする収入に対しては課税する。州外へ引っ越すのは簡単だが、カリフォルニア州税から逃れるのは至難の業ということ。大谷が10年後どこにいるのか楽しみでもある。
これで、2023年のブログは終了した。私も年末年始は執筆活動に毎年ではあるが専念する。富裕層に対する節税策の封鎖は次々に発せられる、1月15日号の毎日新聞・エコノミストではこの問題に私が執筆している、ぜひご購読ください。今年も1年間ありがとうございました。
よいお年をお迎えください。
★ 推薦図書。
佐藤義典著 「KPIマーケティング」 朝日新聞出版 1980円
KPI(Key Performance Indicator=重要業績評価指標)とは、それさえ追いかけていけば結果が出る指標とのことである。企業にとって主な結果は売上である。したがって企業は売上目標なるものを掲げるが、売上とは買いたいと考えた結果としてついてくるものである。KPIとして追うべきは売上ではなく、「買いたいを作れた数」なのである。では「買いたい」をどうやって作れるのか、顧客が「買いたい」と思うのは、それが顧客にとって「価値」があるからだ。それは、競合ではなく「あなたから買いたい」と思わせなければならない。それには、自社の商品に、他社とは違う「強み」を伝えなければならない。KPIは自社の戦略を徹底的に具体化する事である。その手法を書いた本である。