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大谷翔平選手とカリフォルニア州税務当局の壮絶な戦い

大谷選手がエンジェルスからドジャースに移籍したが、両チームとも同じカリフォルニア州である。以前ブログでも書いたが、今年からカリフォルニア州の州税の最高税率が13.3%から14.4%になった。また、大谷選手のドジャーズとの契約金額7億ドル(1000億円)の内6億8000万ドルは繰り延べされ、2034年から2043年にかけて年間6800万ドル(100億円)を支払うという内容に対し、日本では報道されなかったが、カリフォルニア州は猛反発し、連邦議会に対し税制改正を行うよう異例の要請を行ったとの報道があった。
税金面から言えば、仮に大谷選手が10年後リタイアし税率の低い、もしくは州税のないフロリダやネバダ州へ引っ越せば、カリフォルニア州は、税金が取れなくなるので、何とかして税金を取るぞという強い意思の表れでもある。一番の問題は1966年連邦法で定められた年金に関わる法律だ。この連邦法は、いかなる州も年金もしくはそれに準ずる基金からの支払いに対し課税出来ないという法律で、10年以上一定額の支払いを受け取る場合に該当する。大谷選手の契約もこれに該当する可能性が高く,無税で1000憶円受け取れるかもしれない、そうなると額が額だけに、議会に対しこの法律の改正を要請したのだ。
カリフォルニア州税務当局はFranchise Tax Board(FTB)と呼ばれ、州を出ていく納税者には厳しいことで有名である。州外に住んでいたとしてもカリフォルニアを源泉とする収入に対しては課税する。Forbesによるとは、最近ではカリフォルニア州に一度も訪問したことにない人にも課税すると報道している。例えば、テキサス居住者がアマゾン株を売却すれば、テキサス州税はかからないから、連邦税のみ支払うことになる。株式は無形資産と見做され、居住者の州を源泉とする収入となる。それではカリフォルニア州外の居住者がカリフォルニア州にオフィス等不動産を所有しているLLCやパートナーシップの持分を売却した時はどうなるか。
どこに居住していてもカリフォルニア州の不動産を直接保有していれば売却時にはカリフォルニア州に課税されるが、LLC, S Corp、パートナーシップ等で不動産を所有し、その持分を売却すれば、アマゾン株のようにカリフォルニア州では課税されないとされる。長年にわたり、カリフォルニア州外の居住者は持分の売却という形で、カリフォルニア州税を回避してきたのである。ところが、2009年にカリフォルニア州は、裁判で勝訴し、不動産等を所有する無形資産の売却収入に対しては、売主が所在する源泉収入ではなく、カリフォルニア州の源泉として税務権限が及ぶこととなり、これ以降も同様の裁判で勝訴してきている。
州外に住んでいてもカリフォルニア州での投資持分売却に対しては最新の注意が必要となった。またカリフォルニア州を出てから何年たてば安心かであるが、カリフォルニア州の時効は最後に申告を行った日から4年である。またカリフォルニア州での申告が全く行われていない場合は、投資持分売却後10年たってもFTBは税務調査を行うことが出来る。大谷選手は野球一筋で税金に関心がないように思えるが、LAの一流の税務弁護士がついているので心配ご無用だろうが、今回の延払いも実に優秀な弁護士の考えだと思われる。時間給の高い弁護士だと読み取れる。

☆ 推薦図書。
久坂部羊著 「人はどう老いるのか」 講談社 1012円
著者は阪大医学部卒の医師兼小説家である。年を取って避けたいのは認知症と、がんだ。老人には上手に楽に生きている人と、下手に苦しく生きている人がいる。認知症になりたくない人は多いが、著者の母親は93歳まで生きた。最後までボケなかった。母が嘆くのは、したいことが山ほどあるのに身体がいうことを聞いてくれない。母の様子を見に行くと「世話をかけて申し訳ない」「忙しいのに時間を取らせて済まない」と謝ってばかりいた。少し認知症になっていれば、つらい現実から遠ざかれたものを。
がん検診は早期発見のメリットはあるが、現実は過剰診断やバリウムなど被爆のデメリットがある。がん患者のうち、いくばくかは、検診の放射線が原因である。日本人2人に1人はがんになるというが、2人に1人は生涯がんにならないので、がん検診は無駄ということになる。著者も検診を受けたことがなく、周りの医者仲間も同様だ。どれだけ健康に留意しても老化現象は必ずおこる。人は必ず死ぬ。その覚悟があれば、つらい検査や治療を受ける必要がなくなり。空いた時間とお金と体力を好きなことに使える。60歳を過ぎたら為になる本である。

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