司法取引とは、捜査に協力する見返りに無罪になったり、罪を軽減する取引である。つまり「これを喋ってくれたら、あんたの罪は問わない」アメリカでは当たり前だが、6年前に日本でも導入したが、今まで、たった3件しか適用した事実はなかった、しかも3件とも東京地検特捜部の案件、その内訳は①タイの発電所建設に絡む贈収賄事件で贈賄側の発電機会社が司法取引に合意して不起訴②日産のカルロス・ゴーンの報酬の有価証券報告書に過小記載事件、これは彼の秘書室長が取引に合意し、その結果代表取締役のグレッグ・ケリーを起訴した、これは泥沼になり、秘書室長は20数回出廷、ケリーは「秘書室長は有利な扱いを受けたとの思いから、検察の意向に沿った供述をしている」と叫んだだが、元秘書室長には起訴事実の大半が無罪となった。③アパレル会社代表らの横領事件、横領の実行役だった社員が司法取引に合意、結果不起訴になったが、上位者の不正を打ち明けた証人の負担が重いとも指摘された。今回の事件とは、兵庫県警は四国銀行に虚偽の決算報告書を提出して4000万円をだまし取ったとして自動車販売会社の社長ら3人を詐欺容疑で逮捕した。さらにその後になってその申告業務を担当していた税理士法人の税理士2人を逮捕した。融資を申し込んだとき自動車販売会社には実は多額の負債があったとされ、四国銀行から融資を受けた後、破産手続きが開始された。警察は融資を申し込んだ時点で社長や税理士が、経営悪化や銀行に提出した粉飾決算をどう認識していたかである、まさか社長や経理担当者が経営悪化している事実を知らなかったわけではあるまい。税理士はどこまで知っていたかである。警察は捏造した決算書はプロが作成したとみている。そして、司法取引は税理士法人の職員との間で合意された。警察が押収した資料からすると経営悪化の事実を隠して、虚偽の決算書類が作成され、詐欺罪が成立したとして詐欺罪でトップの役員3人は逮捕されたが、司法取引に応じた税理士法人の職員は不起訴処分となった。
司法取引は容疑者や被告に対し共犯者らに対する捜査協力と引き換えに、起訴の見送りや軽い罪に変更するなどの制度で、実行役を免責して首班を刑に服させるということなので、税理士事務所や監査法人は、ほとんどが職員が日々の経理取引を処理している。その経理処理をしている職員に免責を与えると、粉飾決算や脱税事件の捜査が真実に早くたどり着けるので、アメリカ並みにこの分野で司法取引が活発になるのではと思われる。コロナ禍では助成金や融資の不正受給が相次いだ税理士業界である。脱税に加担しなければよいという時代はとっくの昔に去ってしまったのを自覚しなければならない。
☆ 推薦図書。
宮下雄治著 「こうして顧客は去っていく」 日本実業出版社 1870円
なぜ顧客は自社から離れ他社に向かうのか、「リテンションマーケティング」という新しいマーケティング手法がある。この本は顧客維持(リテンション)の戦略について、その専門家が書いている。今多くの産業は成熟期にさしかかっている。これは新規顧客獲得は困難を極める。それより「顧客の離脱」をいかに食い止めるかの方が重要になる。顧客が離脱する要因は「特に不満がないが、なんとなく」が最も多い。これは「顧客満足度」ゼロに近いことを自覚すべきである。顧客満足度は「満足している」と「満足していない」に分類される。後者にならないためには次のような点が重要だ。顧客を深く理解したうえで、きめ細かい顧客対応をする。カスタマーサクセス、顧客の成功を第一の目的として、顧客が望む成功に向けて支援する事である。これがサイレントカスタマーをつなぎとめるリテンションマーケティングだと。述べている。