国はコロナ禍で業績が悪化した中小企業を支えるため、2020年3月から2022年9月にかけ元本の返済と利子の支払いを一定期間免除する、実質無利子・無担保融資、つまりゼロゼロ融資を行ってきた。22年9月末でその利用数は245万件、融資総額は何と43兆円に上る。23年夏から返済が本格化したが、返済が出来ない事業者には信用保証協会が肩代わりする、いわゆる代位弁済は、なんと45%増えたという、これは倒産予備軍を推計する先行指標だが、ゼロゼロ融資以外にも借入れている企業も多いが、代位弁済を受けた事業者は4万3830件、その額は4946億円であった。何分、代位弁済を受けた企業は小規模企業、零細業者であるので、1件当たりに直すと1100万円となる。これらの企業は間違いなく倒産予備軍として認識される。
一方、国税庁が発表した国税滞納者額は2023年6月で8949億円で3年連続増加している。人手不足や物価高にあえぐ中小零細業者は消費税に手を付ける、売上高の10%を消費税として受け取り、のちに税務署に収める原資となるのだが、目の前の資金繰りに使用してしまう。東京商工リサーチの発表した23年度の負債1千万円以上の滞納倒産件数は28件(前年度は24件)である。滞納倒産とは税金や社会保険料の公的支払いの滞納状態が相当期間続き、資産を差し押さえられ経営状態が行き詰った事業者のことをいう。公的機関から資産を差し押さえられた会社に融資をする銀行もないであろう、差し押さえは、不動産なら謄本にはっきり記載されるので誰でもわかるのである。倒産を逃れるためには「差し押さえ」や「財産の換価(公売や競売)」を国税当局にさせない事である。滞納倒産の目にあっているほとんどは、国税に払えないですから、何とかしてくれとお願いに行っていない。法的に国税当局の強制執行を阻止できるのは①「納税の猶予」②「換価の猶予」③「滞納処分の停止」④「①~③以外の事実上の猶予」である、これらは法的に認められていて、国税通則法46条、151条、153条、などに規定されている、このブログで詳しく説明しないが、要は国税局に泣きつくことである。誠意をもって、「お金が出来たら、真っ先に滞納の税金を納めます。それまでは待ってほしい」と資金繰計画などをしたためて頼み込むことである。何もしない滞納者よりはるかに効き目がある。「お上にも慈悲」というのが昔からあるではないか。滞納倒産は絶対に避けるべきである。
★推薦図書。
松永正訓著 「開業医の正体」 中公新書ラクレ 990円
著者は千葉大学医学部卒の開業医で小児外科の権威でもある。著者の言うには「良い医者」とめぐり合うための必読書であり、診療所の舞台裏を包み隠さず、明かす本でもある。医者は何を考えているのか、診療所開設のために、診療所をどうやって作り、その金の工面はどうしているのか、月々の収入や暮らしぶりなどを詳解し、上から目線の大学病院に、腹立つときにはどう対処するのか、看護師に何を求めるのか、診療しながら何を考えているのか、患者やその家族にどう接したらいいのかなどなど悩み事が尽きない開業医。開業医は実は大変である。この本は開業医のリアルと本音を包み隠さず明かしている。そして開業医の正体がわかれば、よい医者を見つける手掛かりに必ずなると。筆者は結んでいる。