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日産自動車、タックスヘイブン課税訴訟、最高裁で敗れる

今回のブログはかなりマニアック過ぎて、国際税務に関わりのない方々には、「何のこっちゃ」であるのでご容赦願いたい。タックスヘイブン国とは極端に法人税などが低い国で、多国籍企業は利益をタックスヘイブン国に落とした方が有利であるが、実際事業が行われていないペーパーカンパニーだと、タックスヘイブン国に落とした利益は本国の利益とみなされて合算して本国で課税される。これがタックスヘイブン税制(CFC税制)といわれる。この事件は国税当局、つまり政府・国と日産自動車の間での裁判で、一審は国が勝ち、二審が日産自動車が勝った。果たして最終審の最高裁はどうするのかに関心が集まった。この問題は日産だけではない、トヨタなど多くの自動車企業や、銀行、損保などの金融機関がタックスヘイブン国の、この手の事業に関わっているので大きな関心事であった。この事件はタックスヘイブンで有名なバミューダを舞台にしているが、メキシコその他の国も噛んでいる。まず、日産はメキシコに子会社(A社)を設立し、顧客つまり自動車購入者に購入代金を貸付(クレジット契約)そして顧客に死亡した時のリスクを考えて、生命保険に加入することを義務付けていた。A社は元受保険契約の契約者なので、保険をメキシコにあるB社(日産とは無関係)を元受保険契約の保険会社、再保険契約の出再者とした。そしてバミューダの日産子会社C社を再保険契約の受再者として、B社とC社は再保険契約を締結しB社は再保険料をC社に支払うというものである。ここで専門的過ぎるが当時の租税特別措置法施行令39条の117第8項5号の括弧書き(カッコガキ)「関連者以外の者が有する資産又は関連者以外の者が負う損害賠償責任を保険の目的とする保険」に該当するかどうかで争った事件である。要約すると、日産子会社A社(元受保険)の保険の目的は、A社の「クレジット債権」であるのか、日産の子会社ではない(非関連者)の自動車購入者の生命保険等であるのかである。高裁では元受保険契約は各顧客の生命保険であるとしたが、最高裁は日産子会社A社の有するクレジット債権に係る経済的利益を担保する保険であり、日産子会社のC社に再保険を掛けたのは関連当事者間取引であり、タックスヘイブン税制に抵触すると判断した。その結果、このようなスキームを持つ日本大手企業は見直しに大わらわである。そうであろう、今まで通っていたからである。私は高裁の判決の方が妥当ともいえるが、日産がゴーン時代から節税対策に邁進していたことや、いろんな会社や国をかませることで、結果、税金が安くなる手法は、もはや日本では通用しなくなっているのではと思う。相続税の最高裁判決でも、つまり手段を講じた結果、低くなる税金は封じられた。これからの節税はAIを超えたものが求められるようだ。

☆ 推薦図書。
旦英夫著 「米語ウオッチ」PHPエディターズグループ 1650円
この本はPHP研究所の編集長からいただいた。「もっと英語を勉強せよ」という意味合いからなのかもしれない。著者は在米40年超のニューヨーク州弁護士である。表紙にはアメリカの「今」を読み解くキーワード131として、ニュースや日常の話題で飛び交うキーワードから、混迷する超大国アメリカの実像を知るための一冊としている。11月大統領選ではトランプは不法移民の根絶を謳っているが、アメリカではPathway to Citizenship)(つまり不法移民のための市民権への道筋)では、子供のころから親に連れられてきた者や、白人はしないアメリカ農業を支えている不法農業従事者などに市民権を与えたらどうかという考えが根強くあるが、なかでも連れてこられた子には罪はない、この子らのことをDreamersと呼んでいる。アメリカンドリームではない。私も初めて知ったのだが、DreamersはDevelopment Relief and Education For Alien Minorsという不法移民を救済する法律の頭文字からそう呼ばれていると。この本は英語の勉強になるだけでなく、アメリカ社会の現実も学べる。

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