先月令和6年分の全国路線価が発表された。令和6年分の平均路線価(平均宅地の評価基準額)は3年連続で上昇した。国税庁によると全国的に景気が緩やかに回復している中、地域や用途に差があるものの、3大都市圏・地方圏ともに上昇が継続するとともに、3大都市圏では、さらに上昇率が拡大し、地方圏でも上昇率が拡大しているところが多く、上昇基調が鮮明になってきているとしている。この「路線価」とは、日本国中のあらゆる道路に価格が付されていて、一日中、人が通らなかった道にも価格がある。何のために「路線価」があるかというと、相続税・贈与税を計算するためだけにあるのである。生前、子や孫に土地を贈与したり、地主が亡くなったりしたときに、贈与税や相続税を納めなければならない、そのためだけに存在する価額と言っても差し支えない。土地の価格は公示価格や固定資産税評価額などもあるので、仮に相続税が廃止されたら、たちまち不要な価額である。したがって、土地を一番の収益源とする相続税法を持つ日本だけが制定した価額でもある。先進国で「路線価」のある国は他には無い。毛細血管のように張り巡らせた「路線価」は、果たして、公正で真実だろうかの議論はさておき、その年に亡くなった人の所有土地は、毎年発表されるその年の路線価で相続税評価され、そして相続税が計算される。今年1月1日に能登半島を襲った地震の被災地にも路線価が付された。今年令和6年に能登半島地震により多数の方々が亡くなられた、当然その中に土地を所有されていた人もいる。また令和5年に亡くなった親の土地を震災以後に相続した人もいる。はたしてこのような被災地の土地を相続・贈与で取得した人にかかる相続税は「路線価」で評価してよいのかという疑問が残る。政府はこのため能登半島地震に係る「特定非常災害の発生直後の価額」を発表した.
石川県、富山県、新潟県を対象に令和6年1月1日(特定非常災害発生日)に所有していた土地は通常の「路線価」によらず、「路線価」の0.55から1.00の調整率を設けて、それを乗ずることにしたのである。つまり通常なら100,000円の土地は最低55,000円から100,000万円の範囲で評価するというもの。一番ひどいところは、通常の55%で評価して相続税をかける、というのだが、危険区域に指定されたり、そこで家屋が倒壊して死者が出たような土地を購入して、再び家屋を新築する人がどれほどいるであろうか、55%で評価されて相続税が多少低くなったとしても、その相続人は納税資金をどうするのだろうか、お金は被災復興と、事業資金、生活資金にまずは当てなければならない。彼らの相続税を全額免除にしても、そう多額でないのは容易に想像できる。「お上の慈悲」で免除や猶予にしても国民は異議を唱えないと思うのだが。むしろ、それほどまでして、減額した相続税を取りたいのかと思う世論の方が多いのではなかろうか。
☆ 推薦図書。
伊賀瀬道也著 「百歳まで歩ける人の習慣」 PHP新書 1100円
人生100年時代には、介護が不要な状態を保つ健康寿命を延ばすことが人生を楽しむ鍵になる。それには自分がしっかり歩けなければならない。その歩くための力には「脚力」と「血管力」が不可欠になる。その「脚力」「血管力」を鍛えるにはどうすればよいかが、医師である著者が書いたこの本のテーマである。それには歩く、正しい姿勢で毎日歩く、単純である。認知症や生活習慣病、高血圧症などはこれで完璧。そして次に血管を強くすること、ゴースト血管にならないための食事、ひいては脳梗塞・心臓病などの予防に役立つ、有酸素運動やアンチエイジング食品も紹介している。この本あらゆる健康は毎日歩くことであるということを科学的根拠に基づいて書いている。