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アメリカ・ハリス大統領候補の税制とは何か

我が国では、自民党の総裁選、立憲民主党の党首選と続くが、どちらも税制政策については一言もない、欧米では考えられない。国民にとっては最も重要な、かつ身近な問題である。その政策がないのに選挙である。国会議員はもとよりマスコミもサイレンサー。外国から馬鹿にされる所以である。
アメリカでは大統領選挙戦がいよいよ3か月を割り、途中出場のハリス副大統領の各分野における政策が徐々に明るみになってきている。その中でハリス氏の税制政策だが、基本的にはバイデン大領の税制を引き継ぐようである。つまり、富裕層には大きく増税、年間所得40万ドル(6000万円)以下の層には増税は行わないという方針である。これにより今後10年5兆ドル(700兆円)の増税となり、4兆ドル(600兆円)の減税となる。ハリス大統領になれば1986年以来の最高税率となり富裕層に対して厳しいものとなりそうである。(アメリカでは年間所得1億円ぐらいは中間層との感覚である)
勿論、この新税制を実施出来るか否かは議会で民主党が上院及び下院でどれだけの議席を得るかにもよるが、少なくとも過半数を取る必要がある。ただ、税制改革については議会が何もしなければ、2016年以前の税制税率に戻るわけなので、62%以上の世帯で増税になるとされている。いずれの党が勝利したとしても、議会の過半数がどうなっているにしろ、税制改革を行う必要があるのである。トランプ陣営は現行の税制を延長し、更にチップやソーシャルセキュリティ(社会保険等)に対し、減税もしくは非課税にしたいようだ。
バイデン大統領の税制路線を踏襲したいハリス氏だが、これは富裕層に対し、キャピタルゲインも含めた全ての所得に対する最高税率を一律44.6%にするというものだ。現行のキャピタルゲイン課税率が23.8%、所得税率が39%であることを考えると大幅な増税である。更に純資産1億ドル(145億円)以上の世帯(全世帯の0.001%)に対しては。未実現のキャピタルゲインに対して、課税を行うと共に、年収1百万ドル(1億5000万円)以上の世帯には、ミニマム税として25%課税を行うとしている。また、キャピタルゲイン課税は優遇税率ではなく、通常所得税率(日本でいう総合課税)として課税する。また、法人税はこれまでの21%から28%に引き上げるとしている。最後にハリス氏は子供の貧困対策として、子供税額控除(Child Tax Credit)を現行の3000-3600ドルに追加し、新生児に対し、6000ドル(90万円)の控除を考えている。また、カリフォルニア州を含めた民主党地盤の強い州に人気のないSALT Deduction(固定資産税や州税等に対する所得控除・日本にはこの控除はない)に1万ドル上限が2017年に税制改革で設けられたことが、現在沈黙しているが、恐らくハリス大統領候補はこの上限撤廃を行い、無制限控除となるであろうことは想像に難くない。
ハリス大統領候補の税制改正は、富裕層に対する未実現利益に対しても課税を行うという異次元の税制改革で、ある意味富裕層課税の方法としては潮目が変わるかもしれないもので、議会の民主党支配で、どこまで行われるか、また裁判になる可能性も高く、実施には多くの困難が待ち受けていると考えられる。私はこの富裕層課税は実現不可能と思っているが、冒頭の通り、石破さん高市さん小泉さん河野さんはもとより、泉さん野田さんも、税制は他人事のようにふるまっている。あるいは分からないかもしれないが、このあたりを国民に訴えれば新境地が開かれるかもしれない。国、国民が税制に無関心なことは非常に残念なことだと思う。

☆ 推薦図書。
鈴木智之/須古勝志著 「部下のポテンシャルに疑問を持ったら読む本」 日本経済新聞出版・日経BP 2200円
高業績者が持つダーク・パワーの秘密と題して、その基礎知識編である。職場で反社会的な行動をとる人がいる①嘘をついてでも自分の勢力権力を拡大しようとする人②自己愛傾向が強く、自分を特別な存在だと信じる人③感情的反応が少なく、自分の欲求充足にしか興味がない人。これらの人々は反社会的な人々の代表例として扱われてきた。①の「マキャベリアニズム」は職場で問題行動を起こす場合があるが、これらの特性として逆境をサバイブして周囲への影響を行使できるような、たくましい面がある。②「ナルシズム」の高い人は、職場での自尊心、自己効力感、目標達成への動機が高く、高いキャリア目標を設定することができる。③の「サイコバシー傾向」の高い人は仕事に積極的に取り組み、利己的な衝動性が仕事においてポジティブな活動量の多さにつながり、多様な活動を通じて仕事の品質が向上するという。この本は、上司として、これらのプラスマイナスを見極めなければならない。としている。

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