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国税庁の予算

ドジャースタジアムで久しぶりの大谷のホームランを観戦した。4万人超の満員だったが、入場料が一人数万円から数十万円とあっては日本ではこれほどの観客は入らない。選手の年棒の高さと観戦料の高さは比例している。いま帰りの機内でブログを書いているが、私のLAのオフィスの賃料もアメリカである。今やアメリカに比べて衣食住なんでも日本は安いと実感する今日この頃である。これは国力の低下そのものである。
ところで来年度予算の各省庁の数字がまとまった。当然国税庁も令和7年度予算案を提出した。これらは法に従って国会審議を経て、国会議員の賛成多数で決定する。審議の場所は予算委員会である。長い間予算委員会をテレビを通してみてきたが、自民党の裏金問題だとか与党議員のスキャンダルだとかを野党が取り上げ、政府を追及する場面ばかりで、予算を審議しているところを見たことはない。不思議の国、日本である、アメリカの予算審議と大違いである。
それでは国税庁の予算をここに披露しておくと、概算要求で6445億円である。日本では税務署の職員給料も職員数も国会で決められるのだ。定員を法律で決めるというのは民間ではなじまないが、そうなのである。今の定員は5万6380人、このほとんどは税務署に配置されている。国税庁の要求は674人の定員増と552人の肩たたき数、差し引き122人の増加としている。ちなみに令和6年度は1191人の定員増と1140人の肩たたきで差し引き51人の増であった。国税庁の予算の87.2%がこのような人件費である。当初予算から4.5%増となるが、その中身は「経済社会のデジタル化・グローバル化に伴う調査・徴収事務の複雑・困難化への対策費」それにインボイス制度への予算である。具体的には大阪に国際管理官、関信局に統括国税実査間、そして全国の国税局に国際税務専門官を配置する人件費用だという。今や節税・脱税は国際化してきていて、それもデジタル化しているので、このような予算を組んだのであろうが、国際税務専門官を多数配置したとて、配置された職員のほとんどは国内業務からの配転である。ソフトバンクグループやデンソーなどの国際事犯での係争、さらにはケイマン諸島などのタックスヘイブン税制と戦わねばならない職員は、民間企業の国際税務専門職以上の知識を持たなければならない。しかし現状はどうであろう欧米、香港、シンガポールなどの税制に精通した職員は何人いるのだろうか、海外に出して鍛えた税務職員を多数抱えなければ民間の精鋭税務専門家に勝てない。当然語学力も必要だが残念ながらこの予算と計画では更なる開きが生じ、国際脱税で捕まるのは氷山の一角になるのではなかろうか。ますます国際化した脱税者の逃げ得にならなければよいがと危惧するのである。

☆ 推薦図書。
上野貴弘著 「グリーン戦争」 中央公論新社 1265円
気候変動の国際政治という副題が付いている。今夏の猛暑も地球温暖化のなせる業か?2015年に採択された「パリ協定」は195か国の締結で地球温暖化を止めるべく温暖効果ガスの排出削減を決めた歴史的条約とされている。ところが以下の三つの原因で条約協定が進んでいない①削減目標で先進国と新興国の対立②二大排出国の米中の対立③米欧の対立とEUと新興国の対立。
アメリカは当初トランプ政権の時、パリ協定から脱退したが バイデン大統領になって復帰した。2020年に入るとエネルギーの脱炭素化が毎年G7で取り上げられ、世界は脱炭素化の産業補助競争に陥りつつあるが、ここにきてアメリカ大統領選挙でトランプが勝てば、また協定は反故にされることは疑う余地もない。そしてG7では脱炭素化を扱わなくなるだろう。としている。

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