新宿歌舞伎町、大阪ミナミ、名古屋栄町など繁華街・歓楽街などで経営する大手ホストクラブ「FG」のグループ会社9社及びホスト30人がこのほど東京国税局から計約20億円の所得隠しを指摘された。通常この業界の脱税は、売上の誤魔化し、架空経費の計上、などなどだが、驚いたのは南太平洋の島嶼国・ミクロネシア連邦の法人に対する架空の「ノウハウ使用料」を3億円計上していたことだ。当然脱税事件なので検察に告発されるためFGの弁護士が会見に応じたが「所得隠しの意図はなかったが、最終的には国税当局の指摘に従った」と述べたが、それはないであろう。
読者もミクロネシア連邦と聞いて、はてな?と思ったのではないか、香港、シンガポールなどは脱税場所の常連だが、そのほか脱税に使うタックスヘイブン(Tax heaven)としては英領ケイマン諸島、パナマ、バミューダが有名である。そのほか太平洋ではバヌアツ、マーシャルなどもある。実は最近ミクロネシア連邦(FSM)が積極的に「うちは税金が安いから」と日本に企業誘致活動を政府が行っているのである。この国は貧しい、国民一人当たりのGDPは極端に低い、そのため国を維持するために、かつてのフィリピンのように出稼ぎ労働者による送金(migration remittances)が盛んで、暮らしてゆけない分を、海外援助(foreign aid)に頼る。そこでミクロネシア連邦が学んだのがバミューダだ、この国は面積53平方キロメートル、人口6万6千人で一人当たりGDPは日本の2倍強である。バミューダはタックスヘイブン国で、この小さい島国が節税システムのスキームを作りだすだけで、欧米諸国の大企業の子会社を誘致し世界の金融界が集まる金融センターにもなっている。そしてミクロネシア連邦はキャプティブ・インシュランスの誘致を日本で行っている。キャプティブ・インシュランスとは再保険会社の子会社を使ってのことだが、つまり利益が沢山出ている会社の節税システムの構築の事で、簡単にミクロネシア連邦で会社が作れ、代表者に日本人がなれ、利益をこの会社に移転しても法人税は微々たるもので、株主総会もペーパーだけでよいというもの。この手の島嶼国のタックスヘイブンの構築はほとんどといっていいほどアメリカがバックについている。
日本法人でタックスヘイブンを利用している場合、この手の「ノウハウ使用料」を計上している会社は多い、特にホームページ作成料などと称して経費に計上する会社は多い。今回の事件はこのホストクラブ創業者が代表を務めるミクロネシア連邦の法人に対する「ノウハウ使用料」として計上していながら未払となっている点である。資金が移動していないのである。タックスヘイブン取引は現実に資金が振り込まれるのが鉄則である。実際に送金していれば脱税事件にまでなっていないであろう。なぜなら経費に実体が伴っていないと国税当局が立証するのは難しい面があるからである。FGはけしからんが、FGのお粗末な国際税務コンサルの責任もあるであろう。
☆ 推薦図書。
小栗隆志著 「Z世代の社員マネジーメント」 日本経済新聞出版 2200円
副題に「深層心理を捉えて心離れを抑止するメソドロジー」とある。昨今の若手社員は、何の前触れもなく突如として辞めることが多い。マネージャーは彼らとどのように接し、育てていけばよいのか?厚労省の発表によれば大卒新入社員の入社3年以内の離職率は32.3%、3人に1人が辞める。若手社員の早期離職を防ぐため「オンボーディング」についての議論が多い。これは新入社員が会社の業務や風土に慣れるまでサポートするということだ。この考えを否定しないが、離職防止を目指すのであれば、オンボーディングのゴールを戦略化ではなく「一体化」に置かなければならない。新卒社員が「この会社で働いていても自分のキャリアは大丈夫だろうか」と品定めさせられてはダメだ。「この会社で働いているのが当たり前」と思われなければならない。この感覚が得られたら、自社の事を話すときに「うちの会社は」という言い方から「私たちは」という言い方に変わる。これは自分と会社が一体化しつつある。これを「We感覚」といい、退職することは自分が大切にしてきたことを否定することになるからだ。