アメリカ大統領選と同時に実施された連邦議会選挙で共和党が下院の多数派となったことで、大統領職と上下両院の多数派を共和党が占める、いわゆるトリプルレッドとなった。民主党のシンボルカラーは青、共和党は赤だからそういわれる。以前2020年には逆にトリプルブルーとなったが、今回は逆転した。日本の首相と違って大統領の持つ権限は、はるかに大きい。そのトランプ大統領は外国に一律10%から20%の関税を課すとした、中国など場合によっては200%の関税を課す、アメリカファースト、これは公約である。トランプは前の時も自身の公約で強硬突破した。アメリカは州の自治権が強い国である。民主党の大きな地盤であるキャリフォルニア州(トランプは大嫌いな州のためLAなどに寄り付かない)では知事がトランプ大統領の政策を差し止めるため法廷闘争の準備をし始めた。しかしトランプ大統領はより一層の減税を選挙期間に訴えている。私が興味があるのは、相続税・贈与税である。インフレ率に連動しているので基礎控除は2025年には1399万ドル(21億円)となる予定だが、もし議会で何もしなければ、時限立法の基礎控除であるので、2026年には基礎控除額は2017年の水準である550万ドル(8億円)に戻るので、大きな減額となり、大変な騒ぎとなる。そこで多くの富裕層は撤回不可能なトラストを作成し、そこに資産を移転している。(この撤回不可能信託Irrevocable Trustは日本の信託にはない)依然のブログでも書いたが、ハリスが次期大統領になれば、富裕層課税を公約していたが、トランプの公約は減税である、共和党はもともと相続税廃止論の議員も多く、実際共和党のブッシュ大統領は2000年に相続税をゼロにした。その後民主党のオバマによって、今の相続税になった。トランプ増税は関税、特に中国にターゲットを当てている。またテスラのイーロンマスク氏と二人三脚な所もあるので、テスラに驚異のある外国会社には多額の税をかけることが予想されている。トランプが勝利した瞬間からテスラ株がうなぎ上りに上昇したのを世界が見ている。日本人は異様に感じたかもしれないが、アメリカでは当然である。イーロンマスクは毎日1.5億円選挙のために使ったのである。国がテスラを守る政策を遂行するであろう。次に相続税であるが増税は考えられない、トランプ大統領本人はそうだが、イーロンマスクも相続税の増税は歓迎しない。私の予想では今後アメリカでは相続税が消滅するのではなかろうか、早ければ2026年時限立法の期限と共にである。税収に占める相続税収は今やコンマ以下である。そうなると世界の富裕層がアメリカに殺到するかもしれない。トランプ大統領は国境を越えてくる不法移民は嫌いだが、プライベートジェットで来る不法移民は歓迎である。来年の連邦議会を早く見たいものだ。
☆ 推薦図書。
戸谷洋志著 「生きることは頼ること」 講談社 990円
自己責任論では、人々を「責任のある者」と「責任のない者」に分断し、前者が後者に援助を求めることは無責任だと批判する。そのため「責任のある者」にその責任を果たす能力がなければ絶望的だ。例えば、あなたは一人で幼児を育てながら仕事をしているとする。しかしある時、体に異変を感じる。簡単には休めない、幼児があなたの世話を待っている。一方会社では大事な仕事が待っている。選択肢は2つある。一つは無理をしてでも今の子育てと仕事を続ける 。これは取り返しのつかないことになる可能性がある。重い病気になり会社にも子育てにも危険が生じる。もう一つは他者を頼ることだ。結果的には周囲への迷惑を最小限に食い止められる。責任を取ることと、他者をたよることは矛盾しない。責任のある者は第三者に手助けを求めることは、恥ずかしいことでも、無責任なことでもない。この本は「弱い責任」を解説している。