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トランプ税制、日本の税制を脅かす

日本では通常国会に入り、衆参とも代表質問が終了し、本格的な審議入りした。予算案の上程と共に令和7年度新税制の論戦が週明けから本格的になる。新税制の目玉の一つに国際課税がある。かつてGAFAを始めアメリカ巨大企業がヨーロッパの低課税国に本拠を置いて節税する手法が問題になった。アイルランドなど法人税率が数パーセント、オランダなどは金融に課税しないなどの国を活用し、様々な手段を用いて米国巨大企業は税負担を回避してきている。このブログでも幾度となく取り上げてきた。アメリカ以外の国やOECD諸国は、それを防ぐため我が国も参加し、令和7年度税制改正でOECD・G20によるInclusive Framework(IF)の国際合意を踏まえ、Undertaxed Profit Rule(UTPR=軽課税所得規則)に対応した国際最低課税制度が導入されるとともに、OECDの所得合算ルールIncome Inclusion Rule(IIR)に対しても新税制では一部見直したうえで課税を強化し
Qualified Domestic Minimum Top-up Tax(QDMTT)国内ミニマム課税を新税制の国際課税の柱とした。つまり世界規模の巨大会社の実行税率が15%に満たない場合は、15%になるように世界規模で課税するというものである。要は本国の親会社の税負担不足分を国外子会社のある国の政府が上乗せ課税する制度である。こうなるとGAFAどころかマイクロソフト、テスラ、エヌヴィデアなど米企業がやり玉にあがるのは想像に難くない。共和党はもともとUTPRを問題視してきた。アメリカ下院のスミス委員長は、前々からこの税制はアメリカの雇用を破壊し1200億ドル(19兆円)の税収を失わせ、結果得するのは中国だと。トランプ大統領は就任早々、このミニマム課税を取り上げ、「OECDがこのミニマム課税を実行に移した国の企業には法人税率を2倍にする報復措置を取る」と宣言した。2倍はトランプ一流の言い方ではなく、連邦税法である内国歳入法(Internal Revenue Code)891条にDoubling of rates of tax on citizens and corporations of certain foreign countriesと書いてある。つまり差別的な域外課税をしている国の企業に、アメリカ国内の税率を2倍に引き上げる報復措置が記してある。
このトランプの発言からして日本はどうするのであろうか、少なくとも日本の法人税率は15%よりかなり高いので、アメリカ企業にミニマム課税することはない。しかしOECDの税法にもろ手を挙げて賛成するわけにもゆくまい。トランプ大統領が存在する限り、アメリカやアメリカ国民、アメリカ企業に不利な税負担を求める日本税法はご法度になる。アメリカファーストである。日本は、「税の公平」ばかりをいうが、国際課税において、それをいうのは日本くらいのものである。税法に関して、日本人は消費税以外には騒がない。外国人は税に敏感だから騒ぐ。いままで「この○○国の税法は日本にとって不利益なので撤回してほしい」と騒いだ首相はいただろうか。

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帝国データバンク情報統括部 「なぜ倒産 運命の分かれ道」講談社 1000円+税
創業間もない企業ばかりでなく、業歴100年を超える企業まで、倒産に至るリスクは常にある。そこに至るには様々な要因がある。そもそも会社を設立した当初から倒産を考える者はいない。ところが業績を伸ばし続けることは容易ではなく、平家物語冒頭の一文を思い出させるのは枚挙にいとまはない。DeNA出身若手社長率いる「ユニコーン」の倒産、日産元子会社や国策会社の破綻、楽天モバイルへの水増し請求発覚で破綻、ダイソーの出資した優良企業がなぜ破綻したのかなど具体的社名、人名を挙げて、なぜこうなったのか個別の原因を探っている。これからの起業家に役に立つ本である。

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