東京地裁での判決文を読んでみると面白い、これはバカラに限らず、ラスベガスでスロットマシン、ブラックジャックなど賭けごとをした経験がある日本人観光客は多い。特に大谷ブームになってからロサンジェルスの球場に来る日本人は多く、そこから車で数時間でラスベガスに行けることから、ベガスのホテルへ行く人は多くなった。しかし、そこで儲けた場合は翌年確定申告で一時所得として申告しなければならない。これは競馬や競輪で儲けた場合でも同じだ。ただ、その事実を日本当局は把握するのは難しい。
今回の事件、課税されたのは、いわゆるVIP顧客で、カジノとの間で供与された2億円程度の信用枠の範囲内でチップを受け取ることができるクレジット契約を締結しており、バカラにおいてチップを賭け、勝てばライブチップを取得していた。東京地裁は、裁判でこのライブチップが経済的価値を有するものであるかどうかをまず検討した。裁判では、この顧客はライブチップは特定の場所においてしか利用できなく、不特定多数の当事者間における自由な取引に通用しないから、客観的交換価値はゼロだと主張したが、東京地裁は所得税の課税対象は、なにも不特定多数の当事者間で取引される資産に限られるものではないとして、退けた。そしてバカラにおいては、各ゲームごとにチップの配布、または没収が行われることから、各ゲームはそれぞれ独立しているとみなされる。このことから、バカラを終了した時点でのチップ残高を見るのではなく、つまりバカラに参加していた各ゲームを一体として見るものではなく、各ゲームごとに見るものである。東京地裁は、本件バカラ所得の計算にあたっては、各ゲームごとに個別に所得計算を行い、そして勝ったゲームに賭けたチップの金額か必要経費となる。分かりやすく解説すれば、客が当初1億円のチップをもってバカラに参加したとする。まず1回目2千万円をかけ負ける。2回目2千万円をかけ負ける。3回目も4回目も2千万円をかけ負ける、合計8000万円損したが、5回目でかけた2千万円が当たり1億円を手にした。この客はこれでバカラを引き上げた、当初1億円を持ってきて、1億円を持って帰ったから、得も損もしなかったと思えるが、日本の税法は違う。一時所得だから損したゲームは見ない。5回目に賭けた2000万円で1億円儲けたのだから、差し引き8000万円の所得として計算しなければならないのである。5ゲーム全体を見ないで、各ゲームごとで計算するので1回目から4回目の損は、勝ったゲームの経費にならないのである。負けた額は数えないで、勝ったゲームだけで所得を計算すると、誰でもプラスになる。これが日本の所得税法なのだ、1億円持ってきて3000万円しか残らなかっても勝ちゲームが一つでもあれば所得税がかかる。これからすると大王製紙で100億円を使った元社長も所得税法違反があったかもしれない。競馬や競輪のファンは、間違いなく、国税当局の言う計算ですれば脱税しているだろう。勝ち馬投票券だけで計算するのだから日本の所得税法は怖い。これからすると日本の個人に関する税法は先進国では群を抜いての異様さであるのは間違いない。
☆ 推薦図書。
野澤千絵著 「2030―2040年 日本の土地と住宅」 中央公論社 1100円
この10年、日本の大都市では、地価が1.5倍以上になっている。これは、そのエリアが国から「都市再生緊急整備地域」に指定され、大規模な再開発が行われたためである。また、大都市圏では住宅価格も高騰している、原因は、共働き世帯が増えて、都心や駅から近い住宅への需要が高まっていること、新築マンションの供給数が減っていることなどが挙げられる。さらに土地整備費や調査設計計画費が高く。このような現在の高コスト化を助長する街作りから脱却する方法として、デベロッパー対して、一般的な世帯でも入手可能な住宅を一定の割合で提供する義務を負わせる。土地や建物の過度な「共有化」「区分所有化」を抑制する。などの措置を講じる必要がある、としている。