共和党は2017年に行われた税制改正の特例措置(日本の租税特別措置法にあたる)が今年期限を迎えるにあたり、その延長や更なる減税措置の準備を行っている一方、民主党は税金を殆ど払っていない企業を懲らしめ、税金を払わせようとしている。最近、トランプ大統領は、年収15万ドル(2300万円)未満の国民には所得税を払わないでよいという考え方(日本では夢みたいなこと)であると述べている。2022年の国勢調査では93%のアメリカ人は年収15万ドル未満(日本では99.8%)とされている、これが実現すれば、殆どのアメリカ人は納税なしとなる。また、法人税に対しても、現在の21%から15%迄下げることも検討しており、実現するかは別として、大幅な減税を行おうとしている。2017年の減税では、大幅に経済活動が活発化し、財政的には黒字になるとしていたが、実際には大幅な財政赤字となっており、今回の減税政策が議会を通過するかは不透明である、ただそうなっても、アメリカ経済は堅調でニューヨークダウは上がり続けた。
最近マスク氏の政治行動が行き過ぎだとして、テスラ社がバッシングを受けているが、ウオールストリートジャーナル(WSJ)によれば、民主党のエリザベス・ウオーレン女性議員がやり玉に挙げているのがテスラ社だ。テスラ社は昨年の納税額は何とゼロ、過去3年では、108億ドル(2兆5000億円)の利益を上げていながら、納税額は、わずか4800万ドル(70億円)であり、そして、ビリオネアのマスク氏はトランプ氏から特別な処遇をされているのではないかとほのめかしている。彼女が言うのは、米国の納税者が、テスラ社に対する税金削減分の負担をしており、ビリオネアの会社に対する巨大な優遇税制処置を確保しようとしている理由を聞く権利をアメリカ国民は有すると、マスク氏宛書簡を送っているのである。
テスラ社の昨年の当期利益は71億ドル(1000億円)で、トヨタのように車の販売で利益を得たのではなく、テスラ社の利益の多くは、EV車やソーラーパネル、電池貯蔵システムの販売からではなく、44億ドルは、高金利による利息収入や環境規制EVクレジットを他自動車会社へ売却したものである。未実現利益ではあるが、テスラ社所有のビットコインの含み益は何と6億ドル(900億円)となっている。
それではなぜテスラ社に法人税がないのだろうか、理由は、2003年から2020年まで毎年赤字が続き、その累積損失で利益と相殺することにより税金支払い債務が発生していない。更にテスラ社はEV 用の税額控除 Creditが 6億2500百万ドル(1兆円)、ソーラーエネルギー保管ビジネス による税額控除 Creditが 7億5600万ドル(1兆2000億円)と昨年記載されている。これらの税額控除は、日本と異なり、使われなかった額、つまり未使用額部分は将来へ持ち越すことが出来る。テスラ社の再生可能エネルギーに対する税額控除額は昨年末時点で10億ドル(1500億円)あるとされている。これらのテスラに対する超優遇税制措置は皮肉にも、バイデン時代に議会を通過したものである、これから見ると、テスラ社は何ら違法行為をしているわけではなく、民主党から文句を言われる筋合いは全くない。しかし、今回マスク氏自身が政府の立場に、公に身を置いているので、政治とビジネスの利害の問題が出てくるのは当たり前のことだ。これからの議会にトランプ大統領がどのような減税措置を繰り出すのかは、テスラ社と重ね合わせ議論を呼ぶのは必至である。ただ日本の税制を考えると、いつも「公平、公正に税負担を頂く」と歴代首相は述べるが、最終的に富裕層課税がひどくなっている日本、反対に富裕層課税が嫌いなトランプ大統領、将来、日本の富裕層は日本ではなく、アメリカに住むのが良いようである。
☆ 推薦図書。
長嶋修著 「2030年の不動産」 日本経済新聞出版 900円+税
異次元の不動産格差時代がやってくる。人口減少や気候変動、金利上昇、外国人の増加などマクロな変化は市場をどう変えるのか、著者がいうのは「不動産の三極化」つまり「上がる地域」「下がる地域」それに「限りなく無価値になる地域」に分かれる。3番目の地域は具体的に言うと。国道16号線の外や、郊外で駅から徒歩15分以上の宅地、首都圏であっても、例えば世田谷区の駅徒歩20分以上、それなら千葉や埼玉の駅ちかタワマンの方が価値が出る。また、これから先、好立地マンションの供給がほとんどなくなる。そして、やがて住宅ローン控除の制度もなくなり、今までにない「新しい暮らし方」が普及する。どこでどう暮らしたらよいか、この本を参照にせよと。