トランプ関税がいよいよ発効し、株式市場は連日歴史的な下落をしていて、日本は大騒ぎになっている、トランプ大統領はアメリカの「解放の日」と言ってバンザイと叫んでおり、この株式市場下落は一時的なものであると主張している。日本では報道されていないが、ウオールストリートジャーナルWSJは、このような理不尽な関税をグローバリゼーションの終わりの幕が引かれたと大々的に評した。トランプ大統領はアメリカの製造業の復活の日だとも主張しているが、現在のアメリカの製造業は先端技術に関わる製品に集約されおり、その製品に必要な基本原料や資材は最も安価で海外から供給される海外のサプライチェーンに依存せざる得ない状況である。このような基本原料や資材の製造までもアメリカ国内で行うには最低5年かかるとされ、それも安価に提供される見込みは全くない。
トランプ政権はこのような保護政策を行い、減税を行い、規制を撤廃、小さな政府をつくることで、自国で生産出来、輸入を減少させ、また、海外からの不法移民により仕事を奪われることもなくなり、自活できる国になるだろうと主張している。アメリカ経済は昨年のGDPが2.8%と先進国が羨む経済成長を遂げている。失業率4.1%、インフレ率2.8%、株式市場も好調であったはずだが、どうしてこのようなタイミングでこのような道理にかなわない政策を行うのかわからないとWSJほかメディアは伝えている。
トランプ氏は1980年代から、アメリカの貿易は不平等に扱われていると批判してきた。彼の貿易と関税に対する考えは不動産ビジネスの中で生まれたと言える。そんなにアメリカ市場が魅力的なのであれば、魅力的な場所にアクセスするにはフィーをかけるように、アメリカ市場にアクセスするにはフィーを取るべきだと。彼は1988年(日本のバブル経済期)のオプラウィンフリーショーで、当時の日本のアメリカ不動産投資に触れ、日本はアメリカにやってきてアメリカ市場でやりたい事をやっている一方、我々が今日本に行って何かを売ることは出来るか?忘れたほうがよい。これは自由貿易ではない。クエートについても同じだ。アメリカで石油を勝手にガンガン売っている。アメリカは彼らの利益の25%を取るべきだと言った。その後彼のターゲットは、日本、クエート、サウジアラビアから中国、ベトナム、メキシコに変わっている。また、トランプ氏はアメリカのテレビが他国に比べると異常に安い、これはアメリカに不利な悪い貿易によるものだと。アメリカの労働者はオフショアへビジネスの移転だけでなく、不法移民によっても犠牲にされている。アメリカ人労働者や家族は過去の大統領が輸入品や移民でアメリカ経済を溢れさせたことで犠牲にされていると非難している。
多くの経済学者は、関税は増税であり、今回のトランプ政権の行動は過去のアメリカの栄光へのノスタルジアが大きく、保護政策はアメリカを貧しくし、国際関係が棄損し、アメリカの経済は後退すると警鐘を鳴らしいている。最後にアメリカで最近トランプ氏を揶揄しているトルコのことわざが載っていた。笑えるが最もだ。A clown moves into a palace. He doesn’t become a king, but the palace becomes a circus.” (ピエロが宮殿に移り住む。ピエロは王様にはならないが、宮殿がサーカスになる。)私もトランプ政権がサーカスで終わらないことを祈るのみである。
☆ 推薦図書。
ヴェンカトラマン・ラマクリッシュナン著 土方奈美訳 「Why We Die」 日本経済新聞出版 2420円
人間の平均寿命は、ここ150年間で2倍に延びた。その主な理由は、疾病に対する医療や公衆衛生の改良進歩である。2011年頃から平均寿命の上昇率は低下し、2015年からは横ばいに転じた。これは人間の寿命に上限があることを示唆している。人間のDNAは劣化する。中には癌などダメージを起こす変異もある。このDNAの損傷に対する細胞の反応が老化の原因の重大要素である。細胞の代謝作用のミトコンドリアは加齢に伴い欠陥が蓄積され、エネルギー生産の効率が落ち、最低限の機能が果たせなくなると、人は死ぬ。しかし老化を克服する試みが成功すれば問題も起こる。富裕層と貧窮層の格差が拡大したり、人口が劇的に増大し食料を始め資源不足に陥る。寿命延長の試みは蜃気楼を追いかけるようなものだと結論づけている。