令和7年度税制改正では、大学生の子を有する親が控除を受けることができる「特定親族特別控除」が石破内閣の下、創設された。これは大学生がアルバイトをして年間給与収入が103万円を超すと、親の扶養親族から外れ、親は本来の63万円の扶養控除を受けることができなくなった。これでは配偶者控除のように103万円の壁と同じで、大学生は働くのを制限しないといけないという。これには強い野党の要望もあって、「特定親族特別控除」なる制度が新設された。この新設された「特定親族特別控除」の適用により、子である大学生の年間給与収入が150万円以下であれば、特定扶養控除と同額の63万円の控除を受けることができる。また大学生の年間給与収入が150万円を超えても「特定親族特別控除」がゼロになることがなく所得に応じて段階的に下がり、188万円を超えるとゼロになる。このような税制は他国にはない。そもそも188万円の給与収入がある学生は大学に通っているのか疑問でもある。ちなみにアメリカでは13歳未満の子を持つ親にChild Tax Credit(児童税額控除)はあるが、その他は大学生の子に教育費を支払った場合、親の確定申告で最大4年間税額控除ができる制度がある、American Opportunity Tax Creditと呼ばれ、学生1人につき最大で年間2500ドル(37万円)である。使途は限定されていて授業料、学費、授業に必要な本、それに文房具である。日本の制度とは大きく異なる。
この日本の「特定親族特別控除」の話をアメリカ人にすると理解不可能である。そもそも日本の高校生はアルバイトするために大学に行くのかである。大学に入る目的は勉学であるはずである、アメリカでは、大学生のほとんどは寮生活である。だいたい有名大学は町から何キロも離れている田舎にあるのが一般である。学内で食堂もあるが24時間オープンしているところは、どこも図書館である。学生たちは必至でそこで勉強する、床に寝転んで仮眠している者もいる。それが大学であるから、まずアルバイトは考えにくい。日本の大学でそんな大学はない。ゆとり教育から始まって、勉強しない日本の大学生、これでは大学生の知識の差は歴然である。AIなど専門分野での国際競争力激化の時代に、もはや日本は太刀打ちできないだろう。定員割れの多い大学、政府は大学生のアルバイト奨励を税制で行っているが、勉学にいそしむ大学生の経済的バックアップはアメリカのように国や公益法人で行うシステムを構築する方が本来である。バイトの隙間に大学に通う学生に日本の将来を託せるだろうか、日本の大学生は皆が皆そうではないのは承知しているが、税金で賄っている教育予算の立て方を考えると、新税制は本末転倒である。
☆ 推薦図書。
野路秩嘉著 「伊藤忠 商人の心得」 新潮新書 860円+税
かつて万年4位だった伊藤忠がトップに躍り出た。今や大学生就職人気度ナンバーワンである。この躍進の背景には創業者・伊藤忠兵衛から今まで脈々と受け継がれてきた近江商人のDNAがある。「三方良し」「商売は損得だけではない」伊藤忠の誰もが商人と受け止められることに誇りを持ち、商人の言葉を信じて仕事に励んだ結果トップ商社になった。本当の商人は自分一人だけが儲かることを志向していない。それよりもみんなが損をしないで継続できる取引を考える。みんなが儲かれば参加意欲が高まる。それが実利につながる。また運不運があるが、商売の運は、腰の低い人のところにやってくる、とも伊藤忠兵衛は言っている。松下幸之助の「商売心得の帖」と合わせ読むと商売の極意はわかるような気がする。