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EXIT TAXとはなんぞや

今、サンフランシスコからの帰路である。今回はサンフランシスコとサンノゼで講演と税務相談をこなしてきたが、相談のなかに年を取ったので日本に帰りたいと言う日系人の何と多いことかと感じた。理由の多くは、食事もさることながら、車を運転できなくなったとか、病気の治療にかかわることが多かった。それでは日本に帰ればと思うのだが、富裕層には一つの障害がある。

 

それはHEART法(Heroes Earnings Assistance and Relief Act of 2008)である。この法は、ある一定以上の資産及び所得がある者に対して、米国市民だけでなくグリーンカード保持者も税金の申告を、市民権、グリーンカード放棄後90日以内にしなければならなくなった。

 

この法では、グリーンカード保持者も対象にされているが、グリーンカード放棄直前の15年の内、少なくとも8年は永住権を保持している者と規定されている。以上の要件を満たす市民、グリーンカード保持者は以下に該当する場合には、税金の申告(Form 8854)をしなければならない。

 

(1) 国籍等を放棄する以前の所得が15万5000ドル(約1500万円)以上である。

(2) 国籍放棄等の時点で純資産(米国資産だけに限らない)が200万ドル(2億円)以上である。

(3) 過去5年間の米国税法上の納税義務を果してしているということに対し、ウソを言ったり、米国政府の税法遵守の証明書の提出をしていない。

 

以上に該当すると市民権もしくはグリーンカード放棄時におけるみなし売却益(Mark-to-Market)が課税される。つまり、放棄前日におけるその個人が全世界に所有する財産を時価で売却したものとみなされ、未実現利益に対して課税されるというものである。グリーンカード所持者は、初めて米国居住者になった時点での時価をその資産の取得価額とすることができる。そしてみなし売却益から発生する売却益には65万5000ドル(6500万円)の控除ができ、夫婦合算では131万ドルの非課税枠があることになる。

 

但し、納税資金の調達の問題もあり、実際にその資産の売却を行う日まで税金の支払いを猶予できる制度があるが、当然、延滞税がかかり、担保も差し入れなければならない。また、事前に放棄者が贈与などを行うと、その受贈者に対し課税するとしていて、通常、アメリカでは贈与税は贈与者が支払うので大きな改正と言える。このように、アメリカの相続税や贈与税逃れのためにアメリカを脱出する者には、かなりのペナルティを与えている。

 

日本もこれから相続税や所得税の増税が見込まれ、すでにキャピタル・フライトが発生している。アメリカよりも税率が高い日本である。資産の海外逃亡だけでなく本人も脱出しかねない(すでに、かなりの者がシンガポール等に移住している)。日本政府もアメリカのEXIT TAXを見習って、日本を脱出する者に課税強化する必要が必ず近い将来生じると思うが、どうであろうか。

 

☆ 推薦図書 ☆
近藤誠著 『医者に殺されない47の心得』 アスコム 1,155円
ご存知、慶応大学の医師で「がんは切らずに治る」で有名になった。病院によく行く人ほど、薬や治療で命を縮めやすい。医者にかかればかかるほど検査が増えて異常が見つかり、薬を飲んだり手術することになる。医者を簡単に信じてはいけない。がんで苦しみ抜いて死ななければならないのは、がんのせいではなく「がんの治療のせい」。がんが見つかっても、忘れるのが一番。治療を焦ると寿命を縮めるという。

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