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同性婚の訴えもカネのため?

私は今、機中である。ニューヨークから成田に向かうJALでブログを書いている。最近、渡米が多すぎてブログをさぼっている感じがある。また月末には、ロサンゼルス、サンディエゴと続く。

 

今年に入ってアメリカでは、ゲイやレズビアンが男女の結婚と同じように、同性カップルの結婚を認めよと最高裁判所にまで迫った。最高裁の同性婚に関するヒアリングは2件あって、一つは2008年にカリフォルニア州で行われた州民投票にて同性婚を禁止する法律(Prop. 8)に関して、もう一つは同性婚を禁止している連邦法(Defense of Marriage ACT = DOMA)に関してのもの。DOMAは、結婚は男女が夫と妻としての合法的なunionであり、配偶者とは夫もしくは妻の反対の性であると定めている。DOMAは1996年にクリントン大統領が定めたものであり、17年後にこのような事態になるとは彼も思ってもみなかったであろう。

 

連邦政府に同性婚を認めよと訴えた、そもそもの原因は、同性婚が認められている州に住み、ゲイの片方が死んだのがきっかけ。日本と異なり、アメリカでは配偶者が取得する夫または妻の財産は、相続税であり贈与税であり全て非課税。ところが、この件は残ったゲイに相続税36,300ドルを支払えと、IRSから支払命令が届いたのが発端。州で認められているゲイ同士の夫婦(?)であり、通常配偶者間では相続税及び贈与税は非課税であるのに、どうして支払う必要があるのか?に端を発して訴訟を起こした。

 

州で同性婚を認められ、連邦政府ではDOMAで同性婚が認められていないので、州(地方税)では夫婦合算申告ができるのに、国(所得税)ではそれぞれ独身として確定申告しなければならない。さらには将来受け取るであろう配偶者に対する年金や健康保険等も同様である。連邦に関わる全てのことが、それぞれ独身であるということだが、裁判の結果DOMAは違法という判決であった。しかしアメリカではDOMAにしても、結婚に関わる家庭法は州で定められていて、今回の最高裁の判決も5対4でかなりの議論を重ねての判決であったが、やはり家庭法のことは州で議論すべきということになったようで、最高裁は連邦法上では同性婚を認めるが、州レベルでは、それを強制するものではなく、あくまでも同性婚の問題は州に裁量を与える権利があるとしている。

 

したがって、Prop. 8でも最高裁は判決しないということで、結局は州の最高裁の判断であるProp. 8は無効であるということで結着した。しかしアメリカでは同性婚を認めていない州が30以上あって、現在、最高裁で係争中なのがネバダ州とニュージャージー州である。カリフォルニア州との違いは、この2州とも州司法当局がDefendしているということだが、最高裁は今後どのように判断するのか。

 

しかし、このDOMAが違法だということで、最も恩恵を受けるのはゲイ、レズビアンの不法移民である。これで彼らはパートナーと結婚することにより、永住権(グリーンカード)を得ることができる。1100万人といわれる密入国者をどうするのか、見ものである。

 

これとは別に先日、アメリカ財務省は、DOMAを違憲判決した連邦最高裁判所の判決(United States V. Windsor)を受け、ゲイ、レズビアン夫婦に新たな連邦税法上の取扱いが公表された。それによると、同性婚カップルが現在居住している州において同性婚が認められているか否かに拘わらず、所得税や贈与税・相続税を含む全ての連邦税法において、男女の夫婦に認められている税法を適用するという。すなわち、人的控除、扶養控除、標準控除、厚生福利、個人退職口座への拠出、勤労税額控除、子女税額控除などが認められ、しかも過去に遡って夫婦合算申告もできるという。より詳しく知りたければIRSの「よくある質問(FQA)」を記載した通達(Rev. Rule 2013-17)をネットで見ることもできる。

 

日本の税法では、相続において配偶者は財産取得のうち2分の1までは非課税だが、それ以上の取り分は原則課税、その他、所得税や贈与税はほとんど配偶者としての優遇措置はない。夫の所得に対しての妻の寄与分を認めないのである。アメリカでは夫の財産の全てを妻が2分の1所有している。日本では夫が死んでから遺産分割でやっと2分の1までが非課税であるが、夫が生きている間は妻が専業主婦であるとすると財産はゼロである。離婚にでもなれば夫の財産のうちいくらもらえるかである。男尊女卑の考えがまだまだ日本の民法に残っている。妻の夫への貢献度を認めない唯一の先進国である。

 

☆ 推薦図書 ☆
玄田有史著 『孤立無業(SNEP)』 日本経済新聞出版社 1,575円
「孤立無業者」の定義は20~59歳で未婚の人のうち、仕事をしていないだけでなく、普段ずっと一人でいるか、そうでなければ家族しか一緒にいる人がいない人たち、つまり、友達、知人との交流が全くない無業者のこと。英語では“Solitary NO-Employed Persons = SNEP”スネップという。2011年の日本の統計ではスネップ人口は162万人で、だんだん増加している。
ニートとスネップの最大の違いは、ニートであるかどうかは求職活動の有無、スネップであるかどうかは友人、知人との交流の有無である。
大きな問題は、スネップが増加すると生活保護者が多くなる。財政悪化の大きな要因である。また、働き手の不足が深刻になる。すると経済の活力が削がれ、社会は人々の助け合い、支え合いのもとに成り立っているが、スネップが増えると社会と言えない単なる「集団」でしかない。
若者に交際、付き合いが減っている。当然、恋人のいない者が増え、結婚が減る。少子高齢化がますます進む国に将来はないという。

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