2015年から、相続税率も所得税(住民税)率も最高55%となる。この税率もさらに上がる可能性がある。額に汗して働いても、本人の取り分より国の取り分の方が多い。そのようにして働いて貯めた金だが、死ねばそれに最高55%の税率が相続税としてかけられる。まさにペナルティである。
一方、アメリカはどうであろうか。日本よりは遥かに低い税率である。ウォーレン・バフェットやビル・ゲイツの税率は10%台である。本人自ら、もう少し税率を上げたらと言う始末。しかし、そのような国でも、出来るだけたくさん遺産を残したいというわけで、財産の秘匿が行なわれる。人間の欲には限りがない。
アメリカ国籍(市民権)を離脱する者は2013年上半期で既に1809人となり、昨年1年間の離脱者1781人の2倍になるのではないかと言われている。その理由はいたって簡単で、オバマ大統領になってからIRSが脱税摘発に躍起となってきたからである。
4年前にこのブログでも書いたが、UBSにアメリカ人が多額の預金口座を隠し持っていたのをあばき、780百万ドルの支払を命じたのを皮切りに、スイスの歴史あるプライベートバンクWegelin & Co.はアメリカ人の12億ドルの資産を隠したとして、遂に銀行を閉鎖するという事態にまで発展した。
日本でも海外に5000万円超の資産を持っている人は、来年3月15日までにその詳細を税務署に届け出なければならなくなった。アメリカの場合は、海外に5万ドル(500万円)以上金融資産を所有している者はIRSに届け出なければいけない。日本よりもっと厳しい。筆者も、相続税対策のセミナーなんかに行くと、この種の質問が多くなった。海外にマンションでも買おうものなら、たちまち引っかかる。
アメリカでは、720万人のアメリカ人がアメリカ以外に住み、アメリカ人ではないがグリーンカードホルダー(アメリカ人と同じ納税義務がある)が1333万人いる。しかし実際に5万ドル以上海外資産を持っていると申告しているのは、僅か82万人だけである。誰がそんなことを信用するであろうか。順法精神が旺盛な日本人には理解できるわけがない。この、IRSをなめたような行為に腹をたてたIRS。オバマが急に課税強化に乗り出したので、それなら、アメリカを脱出するという具合である。
これらのバトルはまだまだ続く。この顛末は次号のブログで話したい。(続)
☆ 推薦図書 ☆
中原圭介著 『シェール革命後の世界勢力図』 ダイヤモンド社 1,575円
アメリカは2007年にサブプライム問題が発生し、住宅価格の高騰が終わり、経済を元に立て直すには10年、2016年までかかるだろうと言われてきたが、シェール革命が2010年から本格化し、その後設備投資が行われ、雇用が回復することになった。
一方、日本では黒田日銀総裁が需要も見込まれないのに量的緩和を行うような失敗をしている。これから新しい産業革命はアメリカで行われ、世界はデフレ化し、中国、ブラジルは没落するであろうと予測している著である。