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どの州で死ねば安上がりか?アメリカの相続税事情

日本の民法では、人が死ねば、その人の財産は、その瞬間から法定相続人の共有となる。そして相続税は相続取得の割合に応じて各自負担することになる。アメリカでは原則、遺産税である。遺産税は死んだ人が払うことになる。しかし死んでいるので、死んだ人になり代わって遺産管理人なる者が裁判所から任命されて、遺産税の納付を行い、残りの財産を相続人に分配することになる。

 

最近ウオール・ストリート・ジャーナル誌やフォーブス誌で、この種の話題を取り上げているのは面白い。

アメリカはご存知のように、連邦税と地方税がある。連邦税(国税)は一律、非課税枠は5.25ミリオンドル(5億3000万円)であるが地方税は異なる。少し学術的になるが、アメリカでは人が死んだ場合、州税では遺産税(Estate Tax)と相続税(Inheritance Tax)に分けられる。ほとんどの州は遺産税であるが、アイオワ、ケンタッキー、メリーランド、ネブラスカ、ニュージャージ、ペンシルバニア州では相続税である。メリーランド州とニュージャージ州は相続税と遺産税の両方かけられるが、二重課税のため相殺されている。

 

州によって遺産税の非課税枠が異なり、さらに税率もまちまちであることから、どこの州に住んで亡くなるかは大きな問題になることがある。例えばコネチカット州では、200万ドル(2億円)以上の遺産に対しては最高12%の州の遺産税がかかる。アメリカでは19の州とワシントンDCに遺産税が存在し、これはアメリカ人口の3分の1を占めている。もっと詳しく言えば、非課税枠は、マサチューセッツ、ニューヨーク、オレゴン、ミネソタ州では100万ドル(1億円)、ニュージャージ州では67万5千ドル(7千万円)、ペンシルバニアやアイオワでは場合によっては、非課税枠はなしという具合。その税率も高く、ワシントン州では最高20%となる。我がオフィスのあるカリフォルニア州は遺産税はなし、また連邦遺産税の5.25ミリオンドルの非課税枠と同じなのはデラウェアとハワイ州である。

 

ただし最近のアメリカの風潮は、相続に際しての課税は二重課税だという世論もあって、カンザス、オクラホマ、バージニア、ノースカロライナ、インディアナ、オハイオ州では遺産税を廃止する方向になっている。また、ほとんどの州では遺産税はあっても贈与税はない。全米で贈与税があるのはミネソタとコネチカット州だけである。また、現在は夫婦での贈与税の連邦税制上の非課税枠は10.5百万ドル(11億円)であるが、このPortability ruleが州では認められないので、多くの人はCredit-Shelter Trustの作成を余儀なくされている。

 

このような状況下、死んだ人がはたしてその州の住民であるかどうかを判断する基準は何であるのか。住民票のないアメリカである。例えばどの州で選挙登録をしているのか、あるいは、運転免許証をどの州で取得しているのか、はたまた職業のライセンスをどこで維持しているのかが判断基準の一つになるらしいが、決定的なのは自分の墓石をどの州で購入しているのかだとしている。

 

ここで日本も学ばなければいけないことがある。日本人はどこで死んでも相続税は同じである。東京一極集中を是正する気が政府に本気であるなら、離島の場合は税率はいくら、人口密度がこの場合は税率がいくらなどと差をつければ、結構富裕層が田舎に暮し、投資と雇用をを生み出しその地域の活性化につながると思うが、いかがだろう。

 

 

☆ 推薦図書 ☆

塩野七生著 『日本人へ 危機からの脱出篇』 文春新書 893円

やはり、どしっと読みごたえがある。冒頭で日本に米軍基地がある理由を他国からの攻撃に対する抑止力などという、独立国家としては誠に恥ずかしいと言っている。本当にそうだと思う。米軍基地は世界のあちこちにあるが、自国を守ってくれているということを堂々と言っているのは日本の他にあるまい。

またユニクロや楽天の英会話を批判した彼女も、外国語の読解力に満足すべきかどうかの判断について、(1)道ですれ違った外国人の会話が聴こうと思っていないのに耳に入ってきた、(2)同じ外国語でもその国の地方で違ってくるイントネーションが判別できた、(3)母国語で書かれた書物と同じ速度で外国語のそれを読めること。彼女も外国語をイタリア語に替えれば、この水準に達していると思うのだが、ある時「左ウチワ」とイタリア語で言おうとしてつまった。所詮、いかに巧みに外国語を操る人でも、その人の母国語の能力以上の内容は、絶対に話せないし、書けもできないのである、と。

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