オバマは再選された。しかし上院は民主党が握ったものの、下院は共和党が勝ち、日本と同様ねじれ国会が続いている。
財政赤字削減のため富裕層増税を大統領選にも掲げて戦った。2010年12月に2年の延長が決まったいわゆる「ブッシュ減税」が来月期限切れを迎える。共和党のベイナー下院議長は、この「ブッシュ減税」のさらなる延長を求め、富裕層に課税を強化すると雇用と投資が削減され、アメリカ経済は下振れすると謳っている。一方、オバマは年収25万ドル(2000万円)以下の所得層だけブッシュ減税を温存して、その他は増税すべきだとしている。しかし考えれば、オバマは毎年そんなことを言っているが、富裕層増税に踏み切ったためしがない。現に2年前に期限を迎えた「ブッシュ減税」も、何だかんだと言い訳しながら延長したのである。
一方、日本はというと「税と社会保障の一体改革」の中で、所得税率と相続税の最高税率は55%か60%に、また相続税がかかる遺産最低限も引き下げるとしている。これが実現すれば、富裕層にとっての日米格差は天国と地獄である。さらに言えば法人税率は、日本は40%だが、アメリカは民主党案は28%、共和党は25%に下げるとしている。日本の増税理由は財政難だから、税金は取れるところから取るという従前の古典的方法、アメリカは財政難だから景気刺激策として、減税を実施し、消費や投資を活発にさせようとする。
民主党政権になって、消費税を上げ、所得税を上げ、震災復興税を新設、相続税の課税最低額を下げ、税率を上げ、減税したのは数パーセントの法人税。その法人税率も近隣諸国は言うに及ばず、アメリカも25%台に世界の趨勢はなっているのに、日本は40%。原発問題もさることながら、「税と社会保障」が原因での1億総増税で年末だんだん日本は暗くなっていると感じるのは私一人ではあるまい。
☆ 推薦図書 ☆
神門善久著 『日本農業への正しい絶望法』 新潮新書 777円日本の農業人口は戦前50%を超えていたが、今は4%、産業構造の変化は阻止することはできない。なぜ日本の農業はこのように弱体化したのか?もともと日本農業の強みは技能集約化にあり、耕作技能に優れているが、農地利用の乱れ、消費者の味覚の劣化、などで耕作技能は低下し、産業界やマスメディアがそれを助長した結果だとしている。伝統工芸品は一部の職人によって細々と継承されている。注文のうるさい目利きの客に職人は鍛えられてきたとすれば、その客の減少は仕事の緊張感の消失になる。日本の農業を支えるのが、舌の肥えた消費者である。その消費者は多数いる。美味しい米や野菜を食べることを幸せに思う意識は、日本人にはまだ残っている。