イギリス領バミューダ諸島で節税のために設立した匿名組合つまり、リミテッド・パートナーシップ(LPS)をめぐっての判断が東京高裁であった。LPSは通常パススルー課税で、法人ではあるが、その収入、支出等すべてはその構成員がしたものとして、LPSそのものには何も帰属しなく、構成員が個人としてしたものであり、LPSは単なる隠れ蓑であるということである。ところが、このバミューダのLPSを税務署は法人とみなした、したがって、法人税申告書を提出しなかったとしてこのLPSに課税所得27億円、無申告加算税1億円を課したのである。
これに怒った納税者はこのLPSは日本の法人には該当しないので、申告の必要なしとして裁判に訴えた。税務署側は(1)構成員の個人財産と区別された独自の財産である、(2)独立した権利義務の主体となり得る、(3) LPSの名において訴訟当事者となり得る、この(1)(2)(3)を満たせば日本租税上の法人となると主張した。
一審では、日本の法人に該当するには、事業体がその準拠法下において、日本の法人に認められるような権利義務の主体として設立が認められたものであるか否かで判断すべきで、地裁は税務署が主張する判断基準(1)(2)(3)は法人といえるための十分条件ではないと課税を取り消した。東京高裁も税務署のいう(1)(2)(3)では判断困難とし、バミューダ法に準拠して組成された本件LPSには事業の損益が帰属するものではないとして、二審も国税当局は敗訴。しかし最高裁に上告受理の申し立てをした。
LPSをめぐっては、アメリカのデラウェア州のLPSも最高裁に上がっている。最近、海外をめぐっての訴訟が急増している。国税当局は片っ端から海外を利用した節税スキームに課税を強化している。来年からは相続税の税率、所得税の税率とも最高55%となる。これは一過性であって、将来60%、70%となるのは目に見えていると富裕層は思っているので、キャピタルフライトは急増している。最近は国税当局よりも海外税務に精通した専門家が増え、日本の税務署の網にかからない事案が多い。鼬ごっことはいえ、富裕層いじめともいえる課税強化が続く限り、オフショア市場を活用した資産フライトは続く。日本の税法では防ぎきれない。個人の税率を下げたほうが税収が増えると思うのだが。ドイツなどに見習うことは多いはずだ。
☆ 推薦図書 ☆
トーマス・シーリー著 片岡夏実訳 『ミツバチの会議』 築地書館 2,800円+税
この本は推理小説のようなタッチで読み応えがある。カール・フォン・フリッシュという学者はノーベル賞を受賞しているが、何の研究で受けたかというと、ミツバチがエサのある所を仲間に伝えるダンスを解析したのである。この著者は、この孫弟子で、ミツバチが新しい巣をつくるとき、その選定場所について集団で意思決定する。では集団意思決定はどのようにしてするのか。意見が分かれたときは、どのようにして裁決するのかなど、仕事にも役立つミツバチの生活が書かれている。