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累進課税に疑問、課税は公平に(アメリカ)

日本では累進課税は常識、ねたみ社会であるので、持てる者は、持たざる者の何倍も税金を払ってあたりまえという。今回の消費税の増税に顕著に出たが貧乏人も金持ちも同じ8%では、貧乏人はかわいそうだというのである。しかし金持ちは貧乏人の10倍消費するなら、貧乏人の10倍消費税を払っているではないか。この論理はなかなか日本人の多数には理解できないらしい。

 

アメリカのケンタッキー州の上院議員にランド・ポール(Rand Paul)というのがいる。彼の父親はテキサス州の共和党下院議員であったロン・ポール(Ron Paul)。覚えている日本人もいるかと思うが、父親は77歳で前回の共和党の大統領選に立候補し、ロムニーに惜しくも敗れた。その息子であるランド・ポールは最近行われた2016年の共和党大統領候補を占う非公式投票(Straw Poll)で、本命とされていたマルコ・ルビオ(Marco Rubio)を破り見事1位となった。

 

彼の目標とする政治は自由主義、政府も軍隊も要らないと唱えているが、注目を集めたのはフラットタックス(Flat Tax)である。彼は一律17%のフラットタックスとし、概算控除や人的控除は残し、住宅ローン控除も寄附金控除もそのままでよいというものである。賃金、給与、年金は課税で、キャピタルゲイン、利息、配当は非課税とする他、居住用財産の売却益も非課税にするとしているが、はたして17%の税率で足りるのかという問題に関しては、ある調査機関の試算によると恐らく20%前半まで税率を上げる必要があるとしている。

 

彼はフラットタックスの目的は歳出を削減することだとし、政府機関や軍隊を廃止するなど極端なことを言っており、フラットタックスになればIRSも要らないとしているが、問題なのが、Social Security(年金等)やMedicare(健康保険)の財源となるPayroll Tax(給与課税)が個人事業主には15.3%(雇用されている者には7.25%)と比較的高く設定されている。

 

しかし、いずれにせよ、ランド・ポールが共和党の候補として選ばれるようになれば、フラットタックスが脚光を浴びるだろう。アメリカは国民の43%が所得税を払っていない。しかも、それらの層は政府からセイフティネットを享受しているということで、低所得者にも税金を払わせるべきだという人は多くいる。富裕層も貧乏人も警察や消防署、公立学校等から受けるサービスは同じであるわけで、フラットタックスは十分理に適っている。

 

日本は戦後60年間の政府税調でフラットタックスは一度も議論されたことはない。なぜなんだろうか?

 

☆ 推薦図書 ☆
五木寛之著 『無力(MURIKI)』 新潮社 680円+税
日本は今あらゆる困難に面している。少子高齢化、人口減少、経済の低迷、先行き不透明な、この不安な時代を、よりよく生きるための考え方「無力」。
近藤誠医師はガンは手術してはいけないという。ある医師は早期発見、早期手術でガンは治せるという。手術をするというのは「自力」であり、何もしないでいるのは「他力」であり己の身を任せるという姿勢である。この時代を生きるには、もはや自力でも他力でもないのである。「無力」は仏教でいう無常観に通じ、この世で変わらないものは何一つない。時代とともにブレながら生きる。日本は人口減で国力が衰えつつある。大切なのは「下山の時代」で、いかによく下降していくかであり、現状を認識して、それを受け止めることだという。

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