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国外財産調書、日米の差

日本も今年の確定申告で、海外に5000万円以上財産のある者は、その財産の種類と金額を税務署に報告しなければならなくなった。アメリカも米国市民と米国永住権者(グリーンカード所持者)はアメリカ国外に1万ドル(100万円)以上の預金がある口座は全て申告しなければならない。いわゆるFATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)である。

 

日本とアメリカの大きな違いは、ペナルティの額であろう。日本で国外財産調書にウソを書いても罰金は来ない。罰金が来るのは海外にある財産から生じる利子、配当、不動産収入をごまかして申告したときに、例えば、海外にアパートを所有しているのに不動産収入を申告していなかった等、収入の原資となる財産を国外財産調書に記載していなかったことによるペナルティである。しかもそのペナルティは、その所得の5%である。一方、アメリカはというと、ウォールストリートジャーナルによると、マイアミ裁判所で預金残高150万ドル(1億5000万円)の預金を報告しなかったために、ペナルティの税額は220万ドル(2億2000万円)とした判決があった。今回、預金口座残高以上のペナルティを認めた判決は全米で初めてである。

 

被告はフロリダ州Coral Gablesに住むCarl Zwernerで年齢は87歳である。被告はリヒテンシュタインとスイスに口座を開設していたが、被告の口座はIRSがオフショア口座に対する特別限定恩赦プログラム(Special Limited Amnesty Program)を適用する前にIRSによって補足されていた。したがって被告とIRSは長い話し合いの末、FBAR(Foreign Bank Account Report)のペナルティの額については妥協できず、今回の裁判の判決になったというわけである。

 

2004年に立法化されたFBARの規定では1万ドル(100万円)以上の口座残高のある者は、その開示を故意に怠った場合は、その口座残高の50%までペナルティを課せられるというものである。これまでIRSは見つかった場合、1年分のみについてペナルティを課していたが、そうではなく、何年も開示していないことがバレると、その年数ごとに最高50%を課すということになれば、5年間開示してこなかったから250%のペナルティである。

 

昨年Beanie BabiesクリエーターのTy Warnerはスイスの口座残高1億ドル(100億円)を長年にわたり保有していたにもかかわらずIRSに報告していなかったとして、ペナルティ5360万ドル(5億4000万円)課せられたのが最高であった。

 

今回の判決ではOne FBARではなく、富裕層からみると恐るべき判決であったと言ってもいい。何しろ口座残高以上のペナルティをとられるのだから、財産は全部なくなる可能性もある。

 

しかしアメリカ合衆国の憲法第8条では、「過度な罰金(Excessive Fine)を禁止」とある。判決が出たものの、IRSの主張、つまり複数年のペナルティの適用を巡っては今も交渉が続けられている。IRSによるLimited-Amnesty Programでは通常の口座残高の27.5%からしかペナルティを課すことができないとされてきたので、今回の判決で自信を得たIRSはさらなるオフショア口座のあぶり出しに拍車がかかっているようだ。

 

日本の国外財産調書制度も、やるなら徹底的にやり、脱税者を捕まえてほしいものだ。

 

 

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青木仁志著 『40代からの成功哲学』 アチーブメント出版 1300円+税
著者は私の長年の大親友である。高校中退で苦労に苦労を重ねてきたが、今は大成功者である。しかも人材教育で著者の右に出る者はいないと、朝日新聞をはじめマスメディアも公認している。
その彼は、人生の勝負は40代からとしている。サラリーマンとしても「昇進・昇格」「家庭」 「教育」「体力」の自覚ができた今、自らの限界を突き破り、自分らしく成長するにはどうしたらよいか。人脈、人間性、専門能力、あらゆる分野で自己開発し挑戦すればするほど、50代、60代で大きな実りを手にすることができるという。著者自らの体験からのまとめである。人生の参考に大いなる一冊である。

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