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海外に本店シフトするのは悪か?

私は従来からずっと不思議に思っていたのが、日本企業の海外現地法人の設立である。中国やインド、マレーシア等に工場を大企業は積極的に進出しているが、日本のマスメディアは非難するどころか、むしろ賞賛している。日本企業が海外に工場を建て、そこで自動車や家電製品を製造し、現地で売る。今やグローバルな日本企業は海外子会社との連結決算であるため、例え日本国内は赤字でも、海外子会社の黒字と通算して黒字であれば、それでよしとしている。はたして、そうであろうか。日本人の雇用が奪われているのである。日本国内に工場を作れば日本人はそこで働けるが、タイやインドネシアで工場を作れば、日本人は働けない。これは大きな問題である。日本人の失業者が増えるばかりである。国益に添えない。

 

アメリカなどでは海外に工場を建て、そこで生産する会社など国賊ものである。アメリカ人の雇用を奪っているからである。日本でよく見かけるフォルクスワーゲンやベンツなど、日本で工場を作って現地生産すると言う話を聞いたことがあろうか。このほど、カール・レビンという上院議員は、コーポレート・インバージョン(Corporate Inversion/アメリカの国外で法人を設立することによりアメリカでの税逃れをする行為)への対策を強化する法案を議会に提出した。その骨子は、
(1)外国法人の買収で、アメリカ国内にあった本店を外国に移転しアメリカでの納税を回避することを禁止する。
(2)アメリカの会社が低税率国の外国の会社と合併し、低税率国で法人として設立することにより、アメリカでの課税を免れることを禁止する。

 

アメリカの法によれば、合併等による存続会社の株式の20%超が合併前の外国法人により所有されている場合や存続会社の従業員、売上、資産の25%以上が外国にある場合には、存続会社はアメリカ以外の国の外国法人としてアメリカ税法上扱われる。

 

今回提出された法案によると、合併前の外国法人の株主の持分が20%から50%に引き上げられるとともに、経営と管理の実質上の本部がアメリカに残り、従業員、売上、資産のいずれか25%以上がアメリカに存在している場合には、例え、存続法人が外国にあろうとも、アメリカ企業としてアメリカで納税することを強制する。このようにアメリカは身勝手な国で、自分の主張を押し通すことにかけては世界に類を見ないが、日本も考えなければならない。三井物産やキヤノンやコマツなど、どの国で一番税金を払っているのだろう。トヨタやパナソニックなどは、どの国で一番、人を雇っているのであろうか。医療費や年金で財政破綻が視野に入っている日本でその余裕はない。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
増田悦佐著 『夢の国から悪夢の国へ』 東洋経済新報社 2300円+税
著者の増田氏と私は旧知の仲である。著者はアメリカの崩壊を予言しているので有名だが、アメリカは株価は堅調だが、債券価格や米国債は値下りしている。アメリカには次のような問題がある。(1)貧困の構造化、(2)利権の横行、(3)自由の仮装現実化、(4)持続不能となった車社会。今後の米国金融市場は、実体経済と関係なく、連邦準備制度が大銀行に供給した資金でニューヨークダウだけは堅調である。しかし、中央銀行が破綻を免れるために紙幣をすりまくれば、後はハイパーインフレしか道はない。インフレの助長と株価を維持するためには、戦争しかないのではないかと著者は言う。

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